<S>
春風通り過ぎ
見上げた視界　広がる
四月の蒼い空
飛び立つ　さくらひとひら

<1A>
住み慣れた街　春の足音に
ふと誘われた　古ぼけたティールーム
<1B>
小窓から覗く　穏やかな香りと
開いた扉が鳴らす　乾いた鐘の音
<1S>
「ようこそいらっしゃいませ」
耳に優しいバリトン
椅子にからだ預け
ためいきひとつ零した

<2A>
静かな空気　落ち着いたメロディ
胸の中で　踊り出したのは誰？
<2B>
ポット叩いて　鳴るステップ　開くリーフ
…いつの間にか少し　夢を見てたかしら
<2S>
「お客様ご注文は」
子どもの頃食べたまま
忘れていたはずの
なまえが口から零れた

<C>
瞼閉じて少しだけ　いつもと違う物思い
モノクロだった景色たちが　自分の色を取り戻す

<S>
ひと匙かき混ぜる
亜麻色　甘めミルクティ
開いた小窓から
訪れる　さくらひとひら

<S↑>
ふわりと舞い降りた
カップの中の世界で
踊り出した君に
唇でそっと触れた