雨の日に暗い気分になるのは、雨のせいで外に出れず、雲のせいで昼でも暗く、自分の周りの空間を認識的に狭く感じ、圧迫感を覚えるからだそうだ。
 ところで、高い所から見る風景というのはとても広く感じる。
 高所からの景色というのは壮観だ。何でもない風景でさえ、素晴らしいと感じる。
 人は自分がそれまで住んでいた世界を一望したとき、ある種の恐怖を感じるという。
 どれだけそれを本人が拒んでいようとも、不意におそいかかってくる暴力のような認識。俯瞰の視界がもたらす衝動的な感情。
 それは『遠い』だ。
 広すぎる視界というのは、転じて世界との隔たりができてしまうものだ。
 自分が体感出来る狭い空間より、自分が見ている広い風景の方を、住んでいる世界だと認識するのは本来は正しい。
 だが、その広い世界を意識したとき、果たして自分は本当にここに存在しているのだろうか、と不安になる。自分が存在していることの実感が持てなくなる。
 それは自分が世界から孤立しているのか、ただ世界が遠いだけなのか。
 それとも……

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投稿日:2014/06/06 20:20:25

文字数:452文字

カテゴリ:小説

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