システム開発をしていると、無数の音に囲まれる。キーボードを叩くリズム、ファンの低い唸り、通知の短いチャイム。そして何より忘れられないのは、エラー音だ。画面に赤い文字が並ぶとき、気分は一気に沈むものだが、耳に届くその音をじっと聞いてみると、どこか不思議な旋律を感じる瞬間がある。

考えてみれば、バグやエラーはシステムが発する声であり、こちらに何かを伝えようとする試みだ。その一つ一つは小さなフレーズのように響いて、同じメロディーを繰り返すこともあれば、予想外の和音を作り出すこともある。私はいつしかそれを「小さな楽譜」と捉えるようになった。

個人開発で自動化ツールを作っていたとき、エラーが頻発してどうにも進まない日があった。けれどログを追いかけていくと、同じメッセージが繰り返し現れる。その規則性に気づいたとき、まるでドラムのリズムを刻んでいるかのように思えて、つい笑ってしまった。結局は単純な記述ミスだったが、そのときの体験は今でも忘れられない。

スタートアップの現場でも、想定外の挙動やエラーメッセージはよく登場する。焦るよりも、まずその音に耳を澄ませてみる。すると、どの部分が主旋律で、どこが不協和音なのかが見えてくる。そこから改良のアイデアが浮かび、気づけば問題が解決していることが多い。システムの声に耳を傾けることは、音楽を聴くこととどこか似ている。

振り返ると、私はコードを書いている時間よりも、エラーと向き合う時間の方が長いかもしれない。それでも苦ではなく、むしろその音に導かれて次の解決へ進んでいる気がする。作業机の上で生まれる小さな楽譜は、完成したシステムの静かな動作音へと繋がっていく。その過程そのものが、一つの曲のように思えてならない。

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【山本達也:千葉県/市川市】エラー音は小さな楽譜

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投稿日:2025/09/01 09:29:43

文字数:733文字

カテゴリ:歌詞

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