盲目の時計職人
彼は盲目の時計職人
今日も彼は時計を作る
できる時計はいつもへんてこなものばかり
今日作った時計には長針がない
かっちこちかっちこち
いつになったら本当の時計をつくれるのだろうか
だけど知らない。
彼はそれが完成品だと思いこんでいる。
彼は盲目の時計職人
今宵うまれた時計は文字盤がさかさま
同じ時計は二度と作れない
彼は寝るのも忘れて時計を作る
ぼーんぼーんぼーん
いつになったら時計作りを辞められるのか
誰も知らない
彼は今日もまた時計を作る
彼が作る時計の多くは全く動かない。
時にはどうみても本物とそっくりな時計もあった
動かない時計にも動く時計にも興味は無い
ただ彼は、いつか本物の時計ができることを信じて作りつづけるだけ
チッチッチッチッチッチtッチッチtッチッチ
彼の家は時計の音で埋め尽くされている
ある日彼の元に見目麗しき女性が現れた
「紫の時計職人様、どうかお願いです。その力を国のためにお使いください」
彼は彼女の言葉を聞かずに一心不乱に時計を作る
「何故言葉を聴いてくれないのですか! 貴方が作るその時計<機械人形>があれば、わが国は戦に勝てるのに」
ある機械人形の青い瞳は何でも見通せる機能がついていた
ある機械人形の双子は腕の変わりに別々の銃がついていた
ある機械人形の女は背中にも目を持っていた
どれもこれも
彼にとっては失敗作
そんなものに彼は全く興味がなく
「欲しければくれてやる。ただし、同じものは二度と作れない」
とつぶやくのみ
赤い女王はそれを持って消えていく
彼は盲目の時計職人
今日もまた、一人静かに時計を作る
完成された時計ができるその日まで。
【だけど彼は気づいているのだろうか。彼が言う完成品、つまり人間のことなのだけれど、それを生み出すことが不可能だということに。機械人形の設計図からは機械人形しか生まれない。偶然、機械人形を作ったら人間がうまれるなんてことありえないんだって。貴方の世話をする機械人形の身にもなってほしいものです。マイマスター】
盲目の時計職人【作曲歓迎】
盲目の時計職人とは生物学者のリチャード・ドーキンスが24年前に提唱した生物学用語です。
生物の進化は偶然では起こりえない、という意味で使います。
そんな無謀なことに挑戦している時計職人の物語
イメージとしては
盲目の時計職人:がくっぽいど
最後の語り:初音ミク
赤い女王:MEIKO
となっております。
つらつらと書きましたが、曲をつけていただける奇特な方がいましたらご連絡くださいませ。(事後報告でかまいません)
次回作予告
赤の女王仮説:戦い続ける彼女の歌
砂漠で探す一粒のカケラ:捨てられた彼らの希望はいずこにあるのだろうか
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