【鎌風】
水景の山吹に紛れ込んで
ヒスイのように尖る瞳の先
惚けた背に斬りかかる鎌風
研がれた刃に笑みを映していた
蛙鳴も蝉噪も切り裂かれて
轟く飛沫に惑う水鳥
嬌笑に気付き見上げた君が
濡れた袖を捲り走り出した
鬼さんこちらと言わぬばかりに
森を抜け川を越え藪を抜け
さあ鼬ごっこはまだ序の口
然もなくば次のお飯事を
天つ風の音を狼煙に今
交える二つの構え太刀
言の葉を捨て拍子に任せ
逢魔が時を迎えるまで
日中の炎天が嘘のように
四海波静かな宵を迎え
宿り木が一人 挟んで一人
松風にその身を預けていた
朧げに月明かりが覗いて
瘧(おこり)を落としたその輪郭は
此処を天の川と紛うような
幻想にこの身を誘った
天井桟敷を揺らし轟く
火玉が如しその瞬きは
追憶の叢雲を穿って
満天に笑みを弾けさせた
天つ風の音を狼煙に今
交える二つの構え太刀
言の葉を捨て拍子に任せ
逢魔が時を迎えるまで
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