~陸の世界~
「不思議な天候だな」
薄暗いような天気に疑問を抱きながら、海辺を散歩していたスカイ。
すると足に何かにぶつかった。
「……?」
横たわる一人の銀髪の美しい少女。
「あの…大丈夫ですか?」
目を覚ました少女は、王子に驚き、口をパクパクさせていた。
「……声が出ないのですね?」
コクコクと頷く少女に優しく微笑み、王子は城に連れて帰ろうとした。すると少女は顔を歪めた。
「歩くと痛むのかい?」
何も言わなくとも気持ちを理解してくれる王子に少女は涙を流しながら、またコクコクと頷いた。
「よいしょっ」
突然、お姫様抱っこで王子が少女を持ち上げ、優しく笑った。
「これなら痛くないよね?」
少女は顔を赤らめながら頷き、王子はそれを確認するとそのまま城に連れて行った。
「リノールただいま」
「お帰りなさい!スカイ兄様!!」
可愛らしいドレスを召したお姫様は一瞬軽蔑した目で私を見るとまた笑顔に戻って王子に尋ねた。
「スカイ兄様…誰?その美しい方は?」
「あぁ…海辺に倒れていてね。君が俺を助けてくれたの思い出して、俺もちゃんと助けないと…てね」
「まぁっスカイ兄様ったら」
微笑みながら、王子が幼い少女と話す内容にラヴィアは違和感を感じた。
彼女が王子を助けた…?
いいえ、王子を海から助けたのは私。
何で…?
「ねぇ?早くおやつを一緒にいただきましょ?」
「そうだねリノール」
「良かったら貴女も!!」
私がうなずくと幼いお姫様はニコニコとしながらご機嫌でキッチンからアフタヌーンティーセットを取ってくると部屋を後にした。
私は疑問を解くべく王子に質問をしようと口をパクパクさせた。
「何だい?」
王子は羊皮紙と羽ペンを私に渡してくれた。
『あのお姫様は妹ですか?』
答えはNOと分かっていたが、話を切り出すにはこれしかないと私は思った。
「うーん…何語かなぁ……?君はここら辺の住民では無さそうだしね」
私が書けるのは人魚文字…。人間が理解出来るはずがない。
なら……
私は、身振り手振りであの子がいた方を指し首を傾げた。
「…ぁ。紹介してなかったね。あの子は俺を助けた隣国の王女だよ。彼女とは幼なじみで…。この一件で結婚することになったんだ」
結婚……?あの子は嘘つきよ。助けたのは私じゃない。真実を伝えれば私は王子と一緒にいられるの?
色々な想いが頭を駆け巡ってるとあの子が戻ってきた。
「今日はスカイ兄様が大好きなアイスクリームですよ!」
「あ、リノールがお願いしてくれたんでしょ?」
「えへへ……だってスカイ兄様の笑顔が見たくって」
可愛らしくテヘッと笑う姫に王子は軽くハグをする。
「本当に甘い香りがするよなリノールは」
「そうかなぁ……ありがとうスカイ兄様」
優しい表情で小さなお姫様を愛でる王子。
でも私が真実を話せたら……
そう思いながら、私は2人を見つめるしか出来なかった。
~~~
それから数週間経ったある夜
私はバルコニーから海岸を見つめていると
あの幼い姫が海辺にいるのが見えた。
少し気になった私は、後をつけてみることにした。
「ねぇ…リン」
「何?リノール…」
「スカイ兄様は……私を本当に愛してくれているのかしら?」
「何を突然聞くの?」
「…なんかあの姫さん来てから兄様は私を妹としか見てないような気がするの……」
「大丈夫よ!!確かに海から王子を救ったのはあの人魚姫。でも貴女が王子を蘇生したのは偽りなんかじゃないんだから…それに」
「それに……?」
「貴女は6年も前から王子の幼なじみとして生きているんでしょ?貴女はあたしの予想を遥かに超えて王子を本気で愛してる」
「うん……」
「だから…頑張りなさいもう一人の私」
「ありがとう…もう一人の私」
強い意志を持つ表情で海面越しに映っているのはあの黒魔女。
不安そうに甘い表情で笑う白い王女。
まさか……あの魔女と王女は…………
同一人物…!!!!
―………。これは海の神から私への天罰かしら…
それを知った私はそのまま出来るだけ早く、
人魚族が住む海辺に近い砂浜まで痛む足を引きずりながら急ぎ走り去った。
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