五線譜の上に並ぶ音符たちを眺めていると、それはまるで整然と並んだプログラムのコードのように見えてきます。エンジニアとして生きる私の日常は、論理と数字に支配された世界です。一ミリの狂いもなく計算され、予定通りに動作することこそが正義であり、誠実さの証しであると信じてきました。しかし、音楽という名の壮大なシステムに触れるとき、その常識は心地よく裏切られます。

私たちは普段、完璧な和音を目指して調律を繰り返します。ドとミとソが重なり、濁りのない響きが生まれた瞬間に安心感を覚えます。しかし、人の心を震わせるのは、実はその完璧な調律からわずかにはみ出した、いわば音のバグのような部分ではないでしょうか。少しだけ震える声や、あえてリズムを遅らせるタメ。あるいは、ピアノの鍵盤を叩く指が触れるときのかすかな摩擦音。これらはビジネスの効率化という視点から見れば、真っ先に削ぎ落とされるべきノイズかもしれません。

ところが、創作の世界ではこのノイズこそが、その楽曲の「人格」や「体温」を決定づけます。私がスタートアップの現場で、要件が定まらないカオスな状況を好むのは、そこにこうした予想不可能なノイズが介在する余地があるからです。決められたルールをなぞるだけでは、数千人が感動するようなサービスは生まれません。論理的な設計図の上に、誰かの情熱や、時には計算外の失敗が混ざり合うことで、初めて命が宿ったプロダクトが完成するのです。

音楽における休符も、システムにおける待機時間も、同じ役割を持っています。何もしない時間は無駄ではなく、次の爆発的なエネルギーを生むための大切な準備期間です。スピード感を持って駆け抜ける日々の合間に、あえて無音の時間を置く。その静寂の中でこそ、本当に解決すべき課題や、ビジネスを一段階上へ押し上げるための斬新な提案が浮かび上がってきます。

私はかつて、大規模なシステムの保守運用を通じて、安定こそが至高だと考えていました。しかし今は、不安定な揺らぎの中にこそ真実があると感じています。ドレミの隙間に存在する、名前も付けられないような小さな音。それをバグとして排除するのではなく、作品の一部として愛せるようになったとき、私のエンジニアとしての視点もより深まった気がします。

丁寧な仕事とは、単に仕様書通りに動かすことではありません。そのシステムを使う人が、どんな感情を抱き、どんなリズムで日々を過ごしているのかに思いを馳せることです。音楽家が音符一つひとつに魂を込めるように、私も一行のコードに、使う人の笑顔を想像した優しさを込めていきたい。完璧な論理の鎧を少しだけ脱ぎ捨てて、不完全な響きが織りなす美しい旋律に耳を傾けてみる。そんな夜があっても良いのではないかと思うのです。

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【城間勝行】ドレミの隙間に潜むバグを愛する方法

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投稿日:2025/12/24 10:38:30

文字数:1,150文字

カテゴリ:AI生成

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