格子の窓から見える景色が、私の知る世界の全部だった。
うっそうと茂る木々。
その木々の間から見える空。
頭上にある窓から見える外の世界は限られていた。
もっと外の世界が見たい。
もっと色々な事が知りたいと願ったのは、何時の頃だったろうか。
今では望む事も諦めた。
冷たい板の床に座り直し、姿勢を正す。
端に寄せた座卓の上には擦りきれた本が一冊のっているが、一字一句覚えてしまっていて読む気も起きない。
窓の反対側は壁一面鉄格子だ。
入口は付いているが、そこから出た事は一度もなかった。
鉄格子の向こうは廊下になっている。
廊下の奥には入れ替わりで誰かが椅子に座っているが、何度話しかけても答えてくれる者はいなかった。
鉄格子の中の狭いこの部屋が私の全て。
ここで始まりここで終える。
それは揺るがない事実であり、変わる事のない未来だった。
窓から空を眺め、時の移り変わりを知るだけの毎日。
それが忌み子の私にかせられた運命。
しかし、そんな私にも出来る事が一つあった。
それが良い事なのか悪い事なのか、私には分からない。
誰かに聞く事は出来ないし、聞く気もない。
この命をかけて行う。
それはとても甘美な行為。
窓の外は薄暗くなり、一日の終わりを告げる夜が訪れる。
数刻ののち、灯りとともに夕餉がもたらされるだろう。
さあ、私も終わらせよう。
全てをかけて終わらせよう。
この小さき世界から一人の少女が消えた。
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