※ あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!
「すずきPの『どうにもこうにも I LOVE YOU☆』を聞いてたら、いつの間にか小説を書いていた」
な…何を言ってるのかわからねーと思うがおれも何してんのかわからなかった
…頭がどうにかなりそうだった…
ヘビーローテだとか中毒だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

そんなわけでがくこの奴隷が書いてしまいました…

以下、お約束。
①中華風味ファンタジー(時代考証ってなんですか)
②個人解釈(すずきPとは毛ほどの関係もないです…おそろしいまでのゲリラ小説)


大丈夫そうだったら、どうぞ↓











その日も少女は窓際の長椅子に腰をかけ、ぼんやりと外を見ていた。
 屋敷の中庭は、豪商である彼女の父が、その財力の全てをもって作り上げた豪奢な庭園である。四季折々の花が咲き、池では華やかな鯉が跳ね、心地よい鳥の声がする――楽園浄土もかくやというような様相だ。
 しかし、そんな贅の限りを尽くした庭園も、彼女の身に巣食う退屈の蟲は殺せなかった。欠伸をしようととして、止める。例え誰も見ていなくとも、そんな真似は子女のたしなみではない。
 かわりに、ふう、とため息をついた。
 大きな瞳は物憂げに伏せられる。
 年のころは15、6。長い髪は結ってもなお腰の辺りまで垂れていた。肌は艶やかに白く、しかし若さゆえの華やいだ活力に満ちていた。
(つまらない)
 しかし、その目には年恰好に相応しくない憂鬱が宿っている。
 本当に、何もかも退屈で仕様がない。だというのに、好きに欠伸をする権利すら自分にはないのだ、と少女はまた一つ、その小さな桜色の唇から息を吐く。
 その憂鬱は衣食住の悩みから開放された、一種許された人々にしか味わえない憂鬱であったが、それゆえに彼女の心は倦んでいた。
(何か、楽しいことはないかしら?)
 侍女を呼んで何かゲームでもさせようかしらと可愛らしく首をかしげたとき、娘娘と自分を呼ぶ声がした。
 りん、と鈴の鳴る音がする。開け放たれた扉から、頭を垂れた侍女が立っているのが見えた。
「お嬢様。旦那様が、お呼びです」
「お父様が?」
 少女はすっと立ち上がる。衣服に焚かれた香木の香りが微かに薫った。
「何の御用なの?」
「お客様がおいでなのです。お嬢様にご紹介するおつもりなのでしょう」
「そう」
 それはさほど珍しいことでもなかった。広く国内外で商いをしている父の元には、様々な人種が訪れる。父は興が乗ったときだけ、そういった客人に娘を紹介するのだ。これが我が家で一番の宝ですよ、と。
 そんな父の好感度を上げるための策略に道具にされるのは少女の望むところではなかった。しかし、父の紹介する客人たちの目新しさは、彼女に退屈の蟲を一瞬忘れさせてくれる。
 揚々と少女は自室を出た。その背後から侍女がついてくる。服の裾が翻らない程度の速さで楚々と廊下を進み、客間の前で立ち止まった。
「お父様。わたくしです」
 背後の侍女が、りんと鈴を鳴らす。ぎいと扉が開いた。
 常人は無駄と思える広さの客室の中心に、父と、それからもう一人男の影が見えた。
「客人、これが先ほど話していた我が家の宝だ」
 男は少女の姿を確認するやいなや、ぺこりと頭を下げた。がちがちに緊張しているのが見て取れた。深々と頭を下げる男を内心であざ笑ってから、少女はゆっくりと笑む。
「お初御目にかかります」 
 娘の堂々とした振舞を、父は気にいったらしい。快と笑う。
「娘娘。こちらはな、遠い東方の島国からのお客人だ。何でも国の代表としてわが国の進んだ文化を学ばれるらしい。その国と父とは商いのつながりがあるでな。そこでこちらにいらっしゃるのならと、お世話をかってでたのだ」
「まあ」
 少女はことさら驚いたように言う。 
「おえらい方ですのね」
「……いえ」
 そこで漸く男は顔を上げた。遠い国、というほどには、この国の人間と顔立ちに違いは見られない。ただその瞳の色だけは、今までにみたどの人間のものとも似つかない。
「そんなことは、ありません」
 男の話し方は、ひどくゆっくりとしたものだった。一言一言、確かめるように話す。慣れてないのだ。この国の言葉に。語尾が掠れる、その音が優しく少女の鼓膜を打った。
 男は少女よりも頭二つ分背が高い。髪は少女と同じように頭のてっぺんで結い、そしてまた同じように長かった。
「哥哥」
「は?」
「哥哥と呼んでも、よろしいですか?」
 突然すぎる物言いに、男は驚いたようだった。随分素直に感情を出すものだと、少女は少し呆れてしまった。どう見たって少女より5~6年は長く生きているだろう青年は、少女がもう当たり前のようにできる愛想笑いの一つもできないらしい。
「だって、見て。わたしたちおんなじ髪の色しているわ。わたし、昔から兄が欲しかったの。駄目かしら?」
「だめ、ということは、ないです…が」
 そう言ってから、男は父のほうを見やる。
 ああ、そういうことかと、少女は今度は父に笑いかけた。
「ねえ、いいでしょう?お父様」
「娘娘、お前ももう15だろう。いつまでも子ども気味た我儘を言うではないよ。彼は遊びに来ているのではないのだよ?」
「あら、お父様。彼はさっき駄目ではないとおっしゃったじゃない」
 威厳と風格を備えた壮年の商人と、その半分も生きていない娘のそのやり取りに、青年の固かった表情が緩む。
 歳相応に拗ねた顔をしてみせる少女に、青年は微笑んだ。
「ええ、駄目では、ないです。拙者も、妹が欲しいと思うておりました」
「ほら!」
 勝ち誇ったように少女が声を上げる。
「哥哥はよいと言ってくれたわ」
「ああもう。好きにするがいい」
「哥哥、哥哥。お父様のお許しが降りたわ!これで、哥哥はわたしの哥哥ね。ねぇ哥哥、私のことはどうか妹妹と呼んで」
「ええ、妹妹」
 嬉しげにはしゃぐ少女に釣られたように、優しく青年は笑いかける。
 先ほどのがちがちに凝り固まった雰囲気は消え去っていた。酷く穏やかな笑い方をする男だと、少女はぼんやりと思った。
「ではね、哥哥。また遊びに来てくださいましね!絶対よ?」
「ええ」
「おいおい、娘娘。彼は遊びに来ているのではないと…」
「あら、お父様。わたしだって哥哥に教えて差し上げれることがありますわ」
「ほう?例えば?」
「お父様には秘密よ。ねえ哥哥。哥哥だけにお教えしますから、絶対にまた来てね!」
 まとわりつく少女を邪見に扱うこともなく、青年はもちろんですよと答えた。
 その返答に、少女はこっそりとほくそ笑んだ。

――ああ、暇つぶしの道具が手に入ったわ、と。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

Loving!(1)

導入部で力尽きてしまいました…
次はデレ期ですたぶん。

閲覧数:106

投稿日:2009/03/11 00:05:10

文字数:2,772文字

カテゴリ:小説

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