もうずっと一人だった。

外は暗闇、月だけが煌々と光っている。
ずぅっとこの部屋にいるけれど、外の様子は変わらない。

ここはお城のてっぺんにある部屋。
ベッドとたった一つの窓しかないこの部屋で、ただ一人窓の外を眺めていた。

「はぁ……」

ため息がもれる。

外が真っ暗になってから、城中の人間も、街の人々も目を閉じたまま。
私が眠りについて、目を開けたときには、外は真っ暗になり、みんな眠っていた。

どのくらいの時が流れたのかもわからない。
一日か、一月か、一年か。
変わることのないこの城、国。


「…………誰か……起きて……」
祈りにも似た願いの言葉は、暗闇に溶ける。

扉は固く鍵がかけられ、窓は開くけれど、この高さじゃ飛び降りるなんて到底できない。
この部屋にいて、誰かを待つしかない。
部屋の扉の向こう側から足音が聞こえないか、何度耳を澄ましただろう。
窓から怪盗が現れてさらっていってくれないか、何度窓の外の空に目を凝らしただろう。
どんなに願っても、何も起こらなかった。

もうずっとこのまま。
眠りという夢を見せられたまま、この部屋からは出られない。

「…………ねぇ、誰か……」

枕に伏せて、つぶやく。
歎きの雫も悲しみの雫も、もう渇ききっていた。


(王子様なんて存在しないのに)

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい
  • オリジナルライセンス

待ちくたびれたお姫様


なんとなく思いついたので、書いてみました。


タイトルはこちらよりお題をお借りしました。
サイトさま:h a k u s e i
http://hakusei.3.tool.ms/

外部サイトにも載せてます。
作者は同一人物です。
http://29.xmbs.jp/len02-14897-n2.php?guid=on

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投稿日:2011/06/09 07:53:26

文字数:558文字

カテゴリ:小説

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