どうして
こんなに広く冷たい空に

どうしてどうして

泣き腫らしても遅いさ
とっくに動けもしないから

どうしてどうして

こんなにも

よちよち這ってはあとにつづいた
あの子は帰れたのかな
おめかし囲んだ大人たち
「そりゃ通りゃんせ」
上手にあんよもしないけど
みんながやさしく笑っては
「めんこだね」って


かの修羅の描いた雪は
言われるまま沈みゆき
照り返し燃え落ちるけど
ここは寒いままだ

幾歳を経て過ごすとも
背の羽は抜け落ちずゆらめく
見遣るとも届かないあの黒点の曰く
「やれ、忌み子だ」と
しかめっ面、そっぽを向いた

「そろそろおうちへ帰りましょうか」
「天神様のお時間じゃ」
あの子が手を引かれひとりきり
また草を織り眠る

よちよちおいでとあとにつづいて
飛べないのはよくないね
あちらに行くなら左回し

「そりゃ通りゃんせ」

行きつく先はもとどおり
目玉の無い子がたもとおり
どこまで這っても霞みがかる
この川辺の石を拾っては
誰かを待つ

みんなかえようか
僕はかくれんぼ

―お狐様の前でひれ伏す人間の曰く―
晴れても降りゃれ
ほらにっこり

ことしはだまってかごめかごめ
たくさんまわしてとおくへおやりよ
あかいぶんだけわすれましょう
わるいもんはひにくべて

誰にも聞こえないし
姿かたちも見えないのなら
この東風とおんなじで
ただ寒いだけなのに
寂しいのはどうして

「生まれてきてくれて、ありがとう」なんて
嘘をつくのはよくないね
あのゆりかごが墓場ならば
これから口から出る言葉(こと)全部
嘘に代えて燃やして

「かえましょかえましょ」

―息が要らぬからこそ彼は初めて―
―彼は生まれて初めて―
―悲しみを叫ぶことができた―

そりゃ天神様のお通りだとも
行きも帰りも地獄の沙汰と
息も切らさず笑うて嘘となりゃ
僕の生きる意味もないないして
この唄をまた転がしに往く


―悲しげに笑う天狗が呟いている―

通りゃんせ
さあ通りゃんせ
さあ通りゃんせ
さあ通りゃんせ

天神様の細道は
こちらじゃないが