「またお前か」
「ああ?何だゴルァ」
家に帰ればあるはずのほうれん草のお浸しが冷蔵庫から無くなっていた。
犯人はアビスの幼なじみである舌尾マク。好きな食べ物は蜜柑。嫌いなものは特に無し。
「それは俺のだと、何度言えば分かるんだ」
「いーじゃねぇかよ。こんな盗られやすいとこに置いとく方が悪い」
「…自宅の冷蔵庫以外に何処に置けと言うんだ?」
「…自分で考えろ」
そんなやり取りは日常茶飯事。アビスは溜め息をついて、マクを放ったまま自室に入った。堅苦しい上着をハンガーに掛け、荷物を置いて、また戻ればテレビを見ているマクの姿。
マクは気付いたように眉を上げればアビスを見る。
「そういやあお前今日何してたの?」
「お偉い様のお嬢様の家庭教師をね」
「うげ、またそうやって付け入ろうとしてんのか?」
あからさまに嫌そうな顔をするマクに、当たり前だと言わんばかりにアビスが鼻で笑う。
それがまた気に入らないらしくマクは更に眉間の縦皺を増やした。
「損はない。お前みたいにばか正直だと苦労も多いのでな。まあ、お前の場合ただの馬鹿だが」
「んだとゴルァ!てめっ、誰に物言ってんのかわかってんのか!」
「居候」
「ぐっ…」
バッサリと斬られた自分の立場にマクは悔しそうに唇を噛む。そんなマクを横目で一瞥した後、アビスはキッチンに入り紅茶の茶葉を取り出した。
特にこだわりがあるわけではない茶葉をグラスに入れて湯を注ぐ。マクの分も作ってやり、彼の前に置けば再び怪訝な顔。(やはり、か)アビスはもうその理由がわかっていた。
「あんでグラスなんだよ!普通ティーカップにいれるだろ?」
「細かいことを言うな。飲めれば同じだ」
第一印象では、アビスの方が細かいと言うかこだわりが強いイメージを持たれることが多い。
だが実際はマクの方がこだわりが強く、アビスは大して気にしないタイプだった。元暴走族だとか、何だとか黒い噂が飛び交うマクだったが、性格もあってかアビスはてんで気にすることはない。
「つまんねーなあ。単車でも弄ってくるかな」
グラスの中の熱い紅茶を一口飲んで、猫舌なのか片眉を上げた後、マクはそう言った。
彼は単車が好きなのだ。単車に限らず機械的なものは全般。大抵のものは使いこなすし乗りこなす。それが彼の暴走族説の原因でもあった。
「止めておけ。あまりやり過ぎると法に触れるぞ」
「整備だっつの。改造は当分しねえよ」
「そう言って三日前に下手に改造して小火(ぼや)騒ぎを起こしたのは誰だったか」
「…う」
「まあ、そんな騒ぎを起こすのは馬鹿かクズしかいないだろうな。」
「…すみません」
「何を謝るんだ?どこぞのマヌケの話をしているだけだぞ?」
ニコリと笑顔で言うアビスに内心舌打ちをするマクだったが、それで破損した単車の修理代を立て替えてくれたのは紛れもなく目前の彼なわけで。
ぐしゃ、と髪を掻き上げればマクは立ち上がり、玄関先に向かう。
「何処に行く気だ?」
「夕飯買いに」
「…また蜜柑をハンバーガーの間に挟むアレか」
「別にいーだろ、何だその嫌そうな人を見下すような目は!」
鬱陶しいなテメェ!と口悪くアビスを指差しながら罵るマクに彼は溜め息を吐く。そんなアビスにマクは罰が悪そうに押し黙った後、再びくるりと踵を返して言った。
「…ほうれん草、食って悪かった。」
帰ってきたら作るからよ、とぶっきらぼうに言い放てば乱暴に玄関のドアを閉めて出ていってしまった幼なじみ。
アビスはしばらくポカンと玄関あたりを見つめていたが我に返り、フッと笑みを溢した。
「…面倒な奴だな」
――不器用と鬼畜。――
(お前、この水でびちゃびちゃの草は何だ?)
(ほうれん草の浸し。)
(…水浸しな葱ではないか!お前は何処まで面倒で馬鹿なんだ!)
(んなっ!てめっ、人が折角作ってやったのに!)
(生憎お前の料理の実験台になるつもりはない!)
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突然ですが!チャバちーって呼んでもいいですか??
アビス大好きです(*´ω`)
マクも大好きです>ω<)ノ
蜜柑とハンバーガー…食べてみようかしら←
ブクマもらいまっす★
2009/09/07 21:48:24