S、
病室のベッドの上
少年は絵本を開き
最初のページをめくる
1A、
夢がないと逃げた先に
牙をむいた狼の群れ
それが運命(さだめ)だとは思いたくない
迷い続け辿り着いて
同じ場所で再び迷う
いつも物語が進まないんだ
1B、
一輪の赤い華が
幻を映す鏡
そこで見たものは
とある二人の哀れな別れ
1S、
語り手のいなくなった
素晴らしい話の終焉(おわり)
誰もがそれを望んでいる
つぎはぎの心がまた
灯(ともしび)の代償を払う
迷子の主役を照らす
2A、
夢があれば物語が
彩(いろど)られて幸せを生む
それが偶然なら素晴らしいだろう
2B、
繋がれたメロディーが
幻を歌う奇跡
そこで知るものは
やがて終焉(おわり)に近付く言葉
2S、
語り手のいなくなった
つまらない話の終焉(おわり)
誰もがそれを拒んでいる
つぎはぎの身体がまだ
今までの代償を抱え
輝く未来を目指す
S、
語り手のいなくなった
素晴らしい話の終焉(おわり)
誰もがそれを望んでいるんだ!
語り手は自分自身
気に入った話を読めば
悲しいことはありやしない
病室のベッドの上
少年は絵本を閉じて
静かに明かりを消した
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