少女と暮らすようになってから、4年の月日が経ちました。
姫に負けないぐらい少女は美しく育っていました。鬼姫は以前と変わらずの美しさでした。二人はまるで家族のようになり、姫は少女を「妹」と呼び、少女は姫を「姉さま」と呼ぶようになりました。少女は初めのころ自分や鬼たちを怖がっていましたが、今ではすっかり懐いていました。
ある日、少女の十四の祝いの品を市場に買いに行ったときでした。町ではなにやら噂が広まっていました。それは、「鬼がここら辺に住んでいる」というものでした。
姫の胸に一瞬、いやな予感がよぎりました。そのせいか、帰りは知らずのうちに急ぎ足になっていました。
城に帰ると姫は鬼を集め、そして、「もしかしたら人と戦うときが来るかもしれない」と静かに告げました。もちろん、これは姫の予感に過ぎません。けれど、鬼たちは自分の主に従いました。
少女の十四を祝う日になりました。姫は少女に「何でも好きなものをあげよう」と言いました。すると少女は、「ならば、あなた様の一番大切なものをください。」と言いうのです。彼女は何にしようか迷いましたが、昔、幼いころに大好きだった父様にいただいた鬼の面をあげました。少女は穏やかに微笑むとその面を抱きしめて言いました。
「これは、私の生涯の宝物にいたします。」
賑やかな宴会の最中のことでした。姫は不吉な気配を感じます。そして外を見てみると、たくさんの人が城の前に集まっていました。そうです、彼女の予感が当たったのです。 彼女はすぐさま鬼たちを異界に逃がし、「私がもし、死にそうになれば、助けて欲しい」と小さく命じました。そして、少女には奥に隠れていなさいと言いました。少女は何が起こっているのかわかりませんでしたが、姫が必死な顔だったので大人しく従うことにしました。
姫は自分以外の者を逃がした後、静かに上座に座りました。長い静寂が続きます。
しばらく経った後、ふすまがそっと開きました。姫は暗闇に目を凝らし、そして驚きました。そこにはなぜか先ほど逃がしたはずの妹が居たのです。
「妹よ、そなた先ほど奥に逃がしたはずではなかったか?なぜ此処に?」
すると少女は静かに言いました。
「姉さまが心配だったのでございます。どうかもう少しそばに居させてくださいませ。」
そしてゆっくりと近づいて抱きしめてきました。姫は不思議に思いながらも優しく抱きかえします。その瞬間のことでした。彼女の背中に刃が刺さり、彼女は力なく崩れました。そして、
「そなたは妹では・・・ないな・・・。けれど、我が愛しき・・友に殺されたと・・・・思えば、我には何も思い残すことは・・・ない・・・。」
そういって彼女の命は散りました。
姫を殺したのは一人の少年でした。彼は少女の弟なのです。彼は血だらけのまま姉のもとへ向かいました。 少女は弟を見つけ驚き、なぜか泣いている弟を見て顔を青ざめたかと思うと、すぐさま駆け出し姫の元へ行きました。しかし、そこには姫の姿はなく、ただ、たくさんの鬼百合が咲いていました。少女はひざまずいて花を摘むと「ねぇ・・・さま・・・」といって泣きくずれました。
その後、城は焼き払われました。しかしなぜか百合だけは燃えず、残っていたのです。
そして、いつもその百合を見に来る一人の鬼のお面を着けた少女がいたそうです。
鬼姫-後編-
創作童話後編です。ちょっと後編のほうが長いかなという気もしてたりします。
最後は悲しい終わり方ですが、童話って結構悲しいものが多い気がしたので、こういう終わり方にしました。
登場人物は以下のとおりです。
鬼姫:ミク 少女:リン 少年:レン 鬼:KAITO・MEIKO
前編とあわせて読んでいただければうれしいです。
http://piapro.jp/content/5tnobbp2aj5qzc5r
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ご意見・ご感想
浮草
ご意見・ご感想
感想です。
すごく悲しいお話で、読み終わったときちょっと売るっときてしまいました。こういうの弱いんですよ……。
少女はなぜ死にたがっていたのか、少年はなぜ鬼の討伐隊に少女の振りをして加わっていたのか、語らないが故にいろいろ想像できていいですね。
姫の初めて人に必要とされた喜びと、その人間の身内に殺されてしまう運命があまりにも哀れです。そして、その後の少女の健気にも百合の花を見舞う姿が目に浮かぶようでした……。鬼姫を殺した少年の後悔はどこから来たのか、創作の余地がありまくりですね。ぜひ、使わせていただきたい題材です。
さて、アドバイスというか添削をたくさん書いたのですが、その後のことは幸ノ詩の取捨選択にお任せいたします。かなり個人的に見た部分もありますので。
ぜひぜひ、これからもがんばってくださいね。私も幸ノ詩さんの作品を読んで俄然燃えてきました~!
2008/10/15 21:45:03
浮草
ご意見・ご感想
後編の添削です~。
2のまとまり
「姫は一瞬~~~帰りました」
ちょっとここいらは文章のねじれが目立つので、改案ださせていただきます。
・改案<姫の胸に一瞬、いやな予感がよぎりました。そのせいか、帰りは知らずのうちに急ぎ足になっていました>
5のまとまり
「そしてゆっくりと~~抱き締めました」
少女(少年)と姫の「抱きしめる」という行動がかぶっているので、姫の方は「抱き返す」に変えてよいと思います。
添削ここまで。
<おまけ>
全体的に昔話調で語尾に「~でした。」が多いのですが、リズムを重視して「です」「ます」などの現在形の語尾を付けるとだいぶ読みやすくなると思います。
2008/10/15 21:37:48