①
響きは流れて
少女は倒れる
影は痕なく消え
日差しが捩れて
陽炎を呼んで
地の赤の花を揺らした
男は幻を辿る様に 影の姿をただ追っていく
②
匂いだけ 糸口に 裏道を駆けぬけて
猟犬の 本能を 研ぎ澄まし刃をはなつ
届かない かわす影 それは鴉の様に
高く飛び 陰影は 薫りだけを残した
③
複雑に絡む
電信の線に
鴉は耳を研ぐ
ノイズの向こうに
見えたのはひとつ
傍に立つ鐘楼の音
潜む男の捉えた影は ライフルを持った女の色
④
その色は 振り返り 男の影 見据えた
引き金は まだ遠く 微笑みをも 浮かべる
交差する 黒と黒 その銃剣 重なり
その音は 幾つもの 不協和音 をつくる
⑤
駆け引きから 紡ぐ糸は
点と点で 張り詰められ
心拍から (果てしのない)
叩く音が (許しのない)
静寂を (この世界を)
揺らし続けた
凪いだ風 真上の陽 響き渡る鐘の音
その刹那 揺れる影 重なる二つの音
向き合った その軌跡 同じ弧を描いて
それぞれに 一筋の その標を刻んだ
日差しから 捩れから 陽炎は呼び出され
灰色の 景色から 蜃気楼が生まれた
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