遠景の山の波は、絶えず紅葉の色を映し、
空の青だけではわからぬ遠近を、
白雲のパースペクティブが物語っている。

目の前の道筋は、曲がりくねりながら遠くへ遠くへと続いていて、
私は歩きながら、嘆息を重ねていた。
あったはずの家や小屋も、植えた柿の木も、全てなくなり、
見渡す限りの荒野がそこに広がっていたからだ。

震災の爪あとを一番示すのは、積まれた瓦礫でも壊れた建物でもない。
何もない事。これこそがもっとも衝撃であった。

放置された重機を横目でなぞりながら、ふと口に出していた。

「もうすぐ二年経つのに」

そう言わずにはいられなかった。


ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

被災地にて

http://blog.livedoor.jp/poti1233/archives/4280923.html
2012/11/23(金) 21:11:45.85 の写真に寄せて

短文。
今朝、ある一枚の写真をみて衝動的に書いたもの。
書かずにはいられなかったもの。


閲覧数:97

投稿日:2012/11/30 06:57:07

文字数:277文字

カテゴリ:小説

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