突如、黒い服に包まれた女の子が空を駆けた。左眼に蒼い炎を宿して。
『今日という今日は貴方を倒してやるわ!』
 それは対にいる大きな黒い怪物に言ったものだ。それから女の子は槍のような武器を持つと怪物に襲いかかった。怪物はその武器を片手で受け止めるとニタリ、嗤った。
『どうすればいいのよ…。』
 武器を取られ、女の子は立ちすくむ。怪物が武器を投げ捨てる。それから怪物は口から炎を吐く。女の子は為す術もなくやられる、と同時に誰かがやってきて女の子を担ぐとどこかへ飛び去っていった。

 プツンッ。テレビを切る音がした。

「あーっ!兄者!折角良いところだったのにっ!」
 どこをどう見てもアイドルにしか見えない女性―めぐぽはプンスカと着物の上にエプロンを着た男性―がくぽに言う。
「撮ってあるのだから良いのではないか。」
「リアルタイムで見るのが良いのにっ!」
 そう言われても、がくぽはハタキを持って先程までめぐぽが見ていたテレビを掃除し始める。
「電源。抜かないでよ。」
「抜くわけないのでござる。」
 パタパタと埃を叩くがそれを吸い込んだのか、急に咳き込むがくぽ。それをただぼぅと見ているめぐぽ。
「そういえば今日誰か来るの?」
 咳がようやく収まるとがくぽは口を開く。
「メイコ殿とカイト殿が来るのでござる。」


 ボカロ荘から歩いてほぼ5分の位置にあるこのお屋敷は神威家のものだ。和風、なんて言葉は正にこの屋敷のためにあるだろう。木造の塀で囲まれた先にある大きな扉の前には瓦葺きのある屋根が見える。その屋根の門をくぐり抜けると奥に明障子の壁が見える。手前には色とりどりの花や木々が植えられている庭がある。

 カコンッ。ししおどしが鳴る。

「その他にも誰か来る?」
 めぐぽは今もなお掃除をしているがくぽに言う。
「確か…二階の人たち連れてくるとか、言っていたような気がするのでござる。」
「ふぅん。」
 興味をなくすめぐぽ。それから障子を開けるとパタパタと回廊を通り箒とちりとりを取ってきた。
「いる?」
「かたじけない。」
 がくぽはそれらを受け取ると埃をそれに入れて外に放り出す。服に付いた埃を叩いていると人影が見えてきた。6人もいる。
「やっほー!来たよ!」
 声を出したのはメイコだ。顔が赤い。後ろには大きなビニール袋を両手に二つずつ持つカイト、ニコニコと手を振るミクに手を引かれるリン。少々窶れ気味のルカ。それからリンによく似た長身の女性が困惑気味になって屋敷に来ていた。


「えっと。リリィって言います。よろしくお願いします。」
 そう言った後、女性―リリィは畳の上で丁寧に正座してもじもじし始めた。電源の付いていない電気コタツでみかんを食べているリンはそれをひとつリリィに渡す。
「食べる?」
「あ、それじゃぁ…。」
 それを見て効果音がつきそうな程ニコニコしているミク。その襖の扉の先ではメイコを始めとしたカイト、がくぽ、ルカの四人がそれぞれ酒を飲んで酔っぱらっている。無事なのはカイトのみだ。彼は黙々と酔って尚酒瓶を一気のみしようとする姉を止め、顔を赤くして眠っている従弟にめぐぽの協力の下タオルケットをかぶせる。それに、今にも戻しそうな妹にエチケット袋を渡していた。
「あれ、大丈夫なんですか?」
 リリィが指を指す。
「いつものことだから大丈夫だよ。」
 平然と言うカイト。バタバタとこちら側へ向かう。
「いつものこと…なんですか。」
「まぁね。」
 やや呆れ顔で言うカイト。それからミクが口を開く
「お兄ちゃんってどこいってもこういう役回りだよね。」
「ミクっ!」
 やっと笑い出すリリィ。こっそりリンが付け足す。
「カイトお兄ちゃん達、リリィさんに笑って欲しかったんだって。」
 またみかんを食べ始める。


 リリィは所謂ホームレスだ。ボカロ荘近くの農園で寝袋で寝ていたところをローラ(レオンの奥さん)が拾ったことから始まる。それからココでは引き取れないという話になって神威家に引き取って貰おうという話になったのだ。もちろん了承してくれた。が、その後にこうなってしまったので多少本人が困惑しているが。


 夜になると眠ってしまったがくぽの代わりにめぐぽが出迎えてくれた。リリィはそちら側にいる。
「それじゃ、お世話になりました。」
 メイコを背負ったままカイトはお辞儀をする。他のメンバーもそれにならう。
「いいのに。そんなことしなくってもさ。」
 めぐぽが明るく言う。
「また会えるといいですね。」
 リリィがそう言うと
「いつでも会えるよ。だってあそこにあたし達住んでるし。」
 外が暗くて若干見えづらいが四角い建物を指す。
「そういえばそうでしたね。」
 クスクスと笑うリリィ。

 彼らがボカロ荘へ帰るとすぐさまに二人は眠ってしまったそうだ。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

とあるボカロ荘の一日 隣の大豪邸編

今まで書いた中で一番調べまくった覚えがある

あと食事中の方、なんかごめんなさい

そのうち設定出せるといいな


冒頭のめぐぽが見てるアニメ、どっかのロックシューターを参考にしました
最初うろたんだーとどっちにしようか迷って…
今考えればヴォーカリオンも良かったような…

リリィまだ出てないのにフライングしてしまった
ま、いいか
どうせ出すつもりだったし

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投稿日:2010/08/11 16:56:08

文字数:2,001文字

カテゴリ:小説

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