「価値観や好みなんて人それぞれ。だから、気にすることはないさ。あんたはあんたの好きに作ればいい」
そういって彼女は笑っていた。もう、今では彼女の顔すら思い出せないけど・・・。
まあいい。過去は過去。僕は僕のできることをしよう。
「さて・・・・」と、パソコンを立ち上げた。
曲でも作るんだ。自分の好きなものを。何も気にすることはなく。


『kほw83lんwheo20cmhwoく0rmをpq248cうmchsーcんzyt』


「・・・あ?」
開いた画面を見て思わずそんな間抜けな声が出た。
「・・・バグった?マジかよ・・・どうすんだこれ・・・・・・」
頭を抱えて溜息ひとつ。
少し考えて、その状態でボーカロイドに歌わせてみる。
お世辞にもうまいとは言えないとても下手な声。うん、完全にバグっている。
・・・あれ?そもそもこんなバグするのか?


『・・・♪・・・・・・・♪』


・・・歌?
パソコンじゃない。バグ・・・?
バグ?ボーカロイド?で?何をしようとした?
・・・ああ、なんだ。これも全部・・・。




歌、ボーカロイドの歌。機械的な歌。
人によっては深い何だろう。でも俺は好きだ。・・・なんで?
「あ、起きていたのですね。おはようございます」
「・・・・・・?」
男性、白衣、医者?
「一度歌、止めますね」
医者らしき人物が何かのスイッチを押した。すると、流れている歌は止まった。
「声、出せますか?」
「・・・・・・」
意識ははっきりしている。でも、なんだか体が重くてボーっとする。声は、出せないようだ。返事代わりに瞬きだけでもしておこう。
「ふむ、では説明しますね。簡単に言えば、あなたは精神に異常をきたしています」
「・・・」
「あ、単純なトラウマってこともありますので」
トラウマ・・・か。
「ボーカロイドは知っていますよね?」
どうやら、瞬きで通じるようだったので、もう一度瞬きをした。
「簡単に言えば、ボーカロイドの歌を使った催眠治療、それがこれですね」
「・・・・・・歌・・・」
「・・・人間が歌うより、機械が歌う歌のほうが精神世界でより響くので張って言う実験もかねてですね」
「・・・」
「知り合いに作詞家さんがいまして、その方に頼んでいます。患者さんそれぞれによって歌詞が違うですよ」
「も・・く・・・て・・」
「目的・・・ですか?歌によってわざとトラウマを感情ごと引っ張り出して本心を聞いたり、過去と対峙させたり・・・ですかね?」
過去との対峙・・・。
「・・・別の方はですね、眠って死にかけるんです。正確には、殺されかけて死にかける。だから、死にそうになったら目覚めさせなければいけない。だから、歌で目覚めを誘発させている」
「・・・・・・」
「彼女の原因は、母親に殺されかけたこと。でも、なんていうんでしょうね。殺意のない愛なんです。・・・その方への歌詞は
『おいで おいで 愛しい 我が子
おきて おきて 愛しい 我が子
ごめんね ごめんね 愛しい 大好き
おいで おいで おいで 愛しい子』、
直訳すれば、『あなたは生きることを許された』、そんな歌詞です」
「・・・俺・・・のは?」
「まだ、見せることはできません。そもそも、あなたはあの歌詞の意味を理解していない。だから、まだだめです」
「・・・・・・」
「少々、話しすぎましたかね。すみません。あ、他の人の様子、見に行ってきます。では」
そういって、会釈をして出ていったようだ。
たしかに・・・全く頭が追い付いていない。はっきり言うと、何が何だか。
歌・・・歌なのはわかった。でもたしかに、何を言っているかわからない。ボーカロイドのせいじゃない、俺自身の理解力。
俺は・・・僕は何をしていたのだろうか?
曲、曲を作っていて、それで、自分の曲が原因で何かが起こった?何が?誰が?死んだ?
気にしなくていいって、それは違うって、決めつけなくていいって、もう曲を作るなって、大丈夫だよって・・・だめだ、考えると頭が痛い。
・・・眠ろう。またどうせ、忘れて夢の中、精神世界へ逃げ込むのだろうけども。
今は、逃げていたい。
逃げて、誰にも責められることのない世界で、自由に作っていたい。
あの感情が邪魔をして、結局は何も作れないのだろうけど・・・。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

サンプル

こういうことですか?

1時間ほどで書き上げたので雑です

閲覧数:79

投稿日:2015/08/13 05:54:25

文字数:1,768文字

カテゴリ:その他

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