ノートに指紋を押印する。
未来のその唐突な行動がなにを意味するのかすぐには理解できなかった。
ぽかんとするこちらを気にせずに未来は言葉を続ける。
「えーと、御父さんもここに拇印を」
ちゃぶ台を囲むようにして3人が集まると、親父からみて正面になるように未来はノートの向きを変えて、押された指紋のすぐ隣を指差す。
促されるまま親父も親指の腹を朱肉につけて、それを指定された場所に押しつける。
未来の指紋と隣り合うように、向きと上下の位置を揃えて。
並んだ2人の指紋、これを見てふと先ほど道を歩いていた2人の少女の姿が頭の中を過ぎった。
そっくりなものが2つ、造りが同じように。
未来がこれから何をしようとしているのかなんとなくわかった気がした。
親父もこちらと同じでそれに気付いているのか、膝をついた前のめりの姿勢から足を崩してあぐらをかくとノートを見続けている。
未来は指紋が押されたノートをまた自分の前にもってきて、取り出した手持ち式のルーペでそれを見始めていた。
少し険しい表情で、丸いレンズを近づけたり遠ざけたりしながら。
「あ~…たぶんね…これはとてもマズイよ、うん」
しばらくの沈黙のあとで独り言のような未来のその呟きが聞こえた。
それはある程度、予想できた答えだった。
「御父さんと私の指紋…たぶん、同じだと思う」
未来と親父の指紋が同じ、それは普通に考えたらありえない。
同じ指紋になる確率は数百億分の一くらいだと何かで見た記憶がある…でも今の状況は普通じゃない、未来や親父が同じ少女になってしまっているからだ。
鏡に映したように顔も身体も髪の色も同じ。
だから…指紋も同じだとしてもおかしくはない。
【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(13)
ある日、突然、世界中の99.9999%の人間が少女(鏡音リンちゃん)になってしまった。
姿も声もDNAも全て同じ、違うのはそれぞれが持つ記憶だけ。
混乱に陥る人間社会の中で、姿が変わらなかった数少ない人間の1人・佐藤悟は…というお話。
なお、携帯電話で見ることを前提としているので、独特の文体で書いています。
・文の終わりに改行。
・段落ごとに一行空ける。
そのため、段落の一字下げなどは省いています。
見難くなっていたら、すいません。
意見があれば見直します。
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