むかしむかしあるところに、とても美しい国がありました。
その美しい国を統べるは、齢十四の、幼い王女様。
彼女は後に、人々から畏敬の念を込めこう呼ばれました。

『悪の娘』と――。



圧政に苦しむ民の声など、彼女の耳に届きはしない。
届く時もあるが、どうでもいいことなので、破棄される。
そんなわがまま王女様に仕える者達にも不満が出ているが、そういう危険因子も、即刻排除された。
ああ――、素晴らしきかな悪の華。



「レン、入るわよ」
ノックも無しに、王女様は私の部屋に上がり込んでくる。
いつものことだから大して何も思わない。書きかけの日記帳をそっと仕舞って、立ち上がって一礼をした。
「こんな時まで畏まる必要ないでしょ?」
眉間にしわを寄せ、棘のある口調で吐き捨てる王女様。
どうも機嫌がよろしくないようだ。
傍らにある私のベットに、彼女は勢いよく座った。古いベットは軋んだ音を鳴らして、彼女を一つ二つと揺らす。
「そんな顔をしていると、せっかくの華が台無しだな」
私――いや、僕は皮肉っぽく告げて、彼女の方へ歩み寄る。
「こんなの歳を取ってしまえばすぐに意味なくなるもの。今からどうのこうの言われたって、知ったことじゃないわ」
ぷくっと両頬を膨らませてそっぽを向く。どうやら不機嫌の原因はこれのようだ。
「まあ、綺麗って言ったら誰でも喜ぶと思ってる連中だからね」
「例えが安っぽいのよ。気持ちがまるでこもってないし」
はあ、と溜め息を吐いて、王女は僕を見る。
「君なら何て言う?」
それは期待と羨望の眼差し。
「……んー、そうだねえ……」
僕に思いつく言葉は一つしかない。


――可愛いよ、『姉さん』――



期待の中、僕らは産まれた。
教会の鐘は高らかに鳴り響き、国民の歓喜の声が、国全体を包み込んだ。
美しい国に、美しい姫が生まれ。
その後に、ひっそりと生を受けた双子の弟。

この国の伝説に、双子の片方は天使で、もう一方は悪魔の化身だというものがあった。
得てしてそれは、先に産まれた赤子が天使で、後の赤子が悪魔なのだ。
そして悪魔は、産まれてすぐに殺す。
それが当たり前だった。
しかし時の王女――二人の母親は、断固としてそれを拒否した。

こんな可愛らしい子が悪魔な訳がない、私は悪魔など産まない。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
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―悪ノ召使―【自己解釈小説】Ⅰ

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投稿日:2009/12/16 09:22:35

文字数:964文字

カテゴリ:小説

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