戸に手を掛け、思い留まる
その向こうには冷えた夜しかないと
背なで聞いた春売り鳥の請え(こえ)が告げている
彼は誰ぞと尋ねても、灯篭の灯では儚くて
暗雲隠さずとも、小夜に月はない
儚き者よ、其方が泣くなら私が笑おう
盛者などと傲る、其方を笑おう
抱腹、笑い泣き、醜い泣き顔など見せてはならぬと息の限り
針は布地に何を描くだろうか
何も、ただ、穿つのみ
あの狂い鳥は朝に帰れただろうか
誰ぞ彼はと忘れて、また鳴くのだろうか
哀れ哀れと笑う、その震える手をつたう夜露
暗雲立ち込めずとも、小夜の雨は止まぬ
どこで交えた、二人の縁えにし
何処で違えた、二人の縁
泥に汚れた椿を踏み躙る、その痛みを分からぬとは言わせぬ
若人、其方が笑うなら私が泣こう
恋などと謀る、其方を泣こう
報復、泣き笑い、醜い泣き顔など見せてはならぬと息の限り
蟷螂の斧は何を穿つだろうか
暗雲立ち込めずとも、小夜に雨は止まぬ
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