黒い少女と別れを告げた名もなき少女は、カモメたちの後を追うように上空へと飛び立ちました。
光が導いてくれる限り、女の子は空をも駆け巡ることが出来るのです。彼女の透き通るような緑の髪が、2本の光の尾を引いて、まるでほうき星のようでした。
別れを告げたヒトのいる場所へ。
女の子には自分が自分であった時の以前の記憶がありませんでした。自分がいつどこから来たのか、なぜ歌っていたのかわからないのです。
もしかしたら過去に自分を知っているヒトがいて、そのひとなら自分の名前を知っているのかもしれません。
それから女の子はずっとずっとカモメたちと旅を続けました。ずっとずっと目的地もわからないまま飛び続けました。
あの空の向こう側に、自分の名前を知っているヒトがいるがいることを信じて。
いつしか名前のない少女は夜空の中を彷徨っていました。
気づけば一緒に旅を続けていたカモメたちの姿はどこにも見当たりませんでした。彼らは星屑となって夜空にとけ込んでしまっていたのです。
そこは何もない世界でした。誰もいない、何も聞こえない、そんな世界でした。何もない代わりにすべてが見渡せる世界でした。
そこから自分が来た世界を見ることが出来ましたが、手のひらに収まるように小さくて、ただ丸い光が見えるだけでやはりなにもわかりませんでした。
あとは遠くで瞬く星のツブテだけ。
彼女はただ一人何もない世界の中で迷子になってしまいました。
もはや彼女を導いてきた光もここには届きません。
寂しさを紛らわそうと歌おうにも、声が出そうにありませんでした。
彼女は誰かから詩をもらわないと歌えません。光が届かない場所では誰も彼女に詩を届けることが出来ないのです。
とうとう女の子は心細くなって泣き出しそうになりました。
ここはどこだろう。私はどこまで来てしまったんだろう。何も聞こえない、何も歌えない、とてもさびしい。
誰か、誰か私に詩を・・・
彼女は祈り続けました。
私の声を聞いてほしい。ここは寂しい。誰か 私に 詩を ください。
いままでにないくらい彼女は強く願いました。自分に詩が届くことを。
誰かが願いに応えてくれれば、また私は歌うことが出来て自由にこの世界を飛び回ることが出来る、女の子はそう思いました。
誰か お願い 私に歌を ください
叫びに近い祈りが何もない世界を満たしていきます。するといままで夜空にとけ込んでいた光の粒が、カモメたちの果てた姿が、突然少女のまわりに集まってきました。
ものすごいスピードと圧倒的な質量で、その光のツブテは何もない世界をオーロラのように光の帯で包んでいきます。
名もない少女は嬉しくなりました。耳をすませるとメロディーが聞こえます。
夜の静寂を突き破るようなエネルギーに満ちた音。
誰かがメロディーに乗せて彼女に詩を届けてくれたのです。
彼女は歌います。メロディーを届けてくれたヒトと、この歌を聴いてくれるヒトに向けて、精一杯の心を込めて。
雲を突き抜けて
音の壁越えて
高く蒼穹(そら)高く
STRATOSPHERE
僕を引き裂いて
君を惑わせて
高くただ高く
STRATOSPHERE
螺旋を描いて
君の背を追って
高く蒼穹(そら)高く
STRATOSPHERE
夢を切り裂いて
愛を脱ぎ捨てて
高くただ高く
STRATOSPHERE
Ласточк...(ラースタチュカ)
名もなき少女の歌声は何もない世界の闇を、あっというまに圧倒的な光りの質量で埋め尽くしてしまいました。
彼女はあまりの嬉しさに、その歌声は世界中を駆け巡りました。
誰がくれたの?この素敵な詩とメロディー。
彼女は必死に探しました。
嬉しい。この気持ち、あなたに届けたい。
こうして少女はこの歌を、自分の満たされた今の気持ちを、メロディーをくれたヒトに届けるために、また旅を始めるのでした。
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以下の作品から歌詞を引用いたしました。
作者の方々には厚く御礼申し上げます。
“ストラトスフィア -For DIVA EDIT-”
【参考URL:http://piapro.jp/content/7om1oa76rgytostv】
●作詞: Orange
●作曲: t.Komine
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