夏、太陽の日差しが鬱陶しい中。
授業をぼぉっと聴いていると、隣の席から、丸めた紙が飛んでくる。
隣を見ると幼馴染の舞子がジェスチャーをしている。
『かみをあけてよめ』
ゴミかもわからないそれを開けるのは、少し抵抗があったけど。
開けてみると「屋上」とだけ書かれていた。
頭にはてなを浮かべたところで、視線が痛い。
キーンコーンカーンコーン-。
予冷が鳴り昼休みに入る。
「ごちそうさまでした」
「カゲミツー!サッカーしないか?」
「カゲミツ呼ぶな!僕はケイコウだ。先生に呼ばれてるから今日は無理ー」
昼休みはやることが多い。
弁当箱を洗い、歯磨きをこなし、次の授業に向けた机の整理も忘れずに。
忘れたことがないかチェックしていると、ポケットの中に紙切れをみつけた。
「あ、屋上…」
幼馴染から呼ばれたからには、行かなきゃいけないだろう。
けだるげに立ち上がり、ゆっくりと屋上に向かう。
扉を開けると、
「おそい!」
怒声が飛んでくる。
「昼休み終了も近いですし、手短に、何かありましたか?」
「そうやってあなたはもう…いう!いうから待ってね!」
ずいぶん待たせてしまったのだろう。
顔が赤くなっている。
申し訳ないなとの思いで、反応を待つ。
「すぅーーーーはぁーーーー」
深い呼吸の後に学校中に響くかと思うくらいの大きな声で
「すき!!!」
そう聞こえた。
幼い頃からずっと一緒の関係だった。
好きかどうか意識したことはあったけど。
彼氏彼女のような関係は考えてなかった。
改めて考えてみよう。
「うぇええええん…好きなのぉ…」
舞子が泣き出してしまった。
でも僕はその泣き顔が見たくないと思った。
だから…
「好きな子の泣き顔は見たくない」
『キーンコーンカーンコーン‐』
最悪のタイミングで予冷が鳴る。
舞子は聞き取れなかった様子であたふたしている。
でも二度同じことを言うのは好きじゃない。
舞子は返事を聞きたがってずーっと質問を詰めてくるけど。
僕は返さないまま。
今はただふわっとしたまま、この楽しげな怒り顔を眺めたいと思う。
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