私はそっと木の陰から顔を出した。

そして、また木の裏に隠れる。

すでに10分くらい、こんなことを繰り返している。

何度見ても理解できない光景に、私は頭を抱えていた。




「なにあれ、あいつはあんなやつだったっけ?」  

木に囲まれた小さな広場みたいなところに、

同じクラスのやつがいた。

暗いやつで、話かけてもほとんど頷くか首を振るだけだから、

クラスで浮いている。

 ただいただけなら、気にせずに通り過ぎていただろう。

そうじゃないから、

10分も時間を浪費してしまったんだけど……。   



10分前、私は部活が終わって家に帰ろうと近道をした。

ちょっとした林を通ると普通の道を通るより

15分くらい短縮できるから、私はよく近道をする。

今日もいつものように林の中を歩いていた。

 そこにあいつがいたわけだ。

同じクラスの変わり者、水谷夜月。小動物に埋もれながら。

しかも、動物に話かけている水谷。

普段は無表情の水谷が、少し頬を緩ませて小動物と戯れている。

 そのギャップに、私は頭を抱えている。

暗い性格のせいで女子はほとんど寄り付かないが、顔は悪くない。

いや、むしろいい。

そんな水谷の今の様子を見たら、女子が数人倒れるかも……。

 私は頭を振って、私はもう一度顔を出した。

ぱきっ。私の足元から聞こえた音に、

さっと顔を上げた水谷と目が合った。

水谷はいつもの無表情に戻り、立ち上がる。

私は驚いて動けなかった。水谷が私のほうにゆっくり近いてくる。

水谷は私の数歩手前で立ち止まった。

「見たのか」

「え……?」

おろおろとした私の様子に苛立ったのか、

眉間に少しシワが寄った。

「今のを見たのかと聞いてる」

私は水谷もこんな表情をするのかと考えていると、

少し落ち着きを取り戻した。

「見た……けど。なにしてたの?」

水谷は考え込むように俯いた。

私は少し迷って、水谷の言葉を待った。

 数分たって私が声をかけようか迷いだした頃、

水谷は私の目を見据えた。

「お前は、動物と話せるやつがいると思うか?」

私は急な質問に戸惑いながらも、

思った通りに答えた。




「いるかどうかわかんないけど、

いたら面白そうだよね。もしいたら、

うちのタマとポチの通訳してもらいたいかな」

私の答えが意外だったのか、

水谷は少し驚いたような顔をした。

私はその反応を不思議に思って聞き返した。

「なんでそんなこと聞くの?」

水谷は視線を逸らした。

「……」

「言いたくないなら、別に……」


私はなんだか悪いことをしたように感じて、

顔の前で手をひらひらと振った。

「……。俺が動物と話せるって言ったら、どう思う?」

「え……?」

私はまた呆気にとられて聞き返した。

今度は水谷が表情を変えることはなかった。

「どう思うって……。話せるの?」

水谷は答えずに、小さく頷いた。

私はしばらく考え込んでしまった。

「え?どんな動物とでも話せる?犬とか猫とか、鳥も?」

水谷はただ頷くだけだった。

動物と話せる。それってすごくない?

「ねぇねぇ、今から家にきてよ」

「はぁ?」

水谷は呆気にとられたように私を見た。

「家に犬と猫とインコがいるから、通訳して!いいでしょ?」

水谷はしばらく私の顔をじっと見つめた後、

躊躇いがちに聞いてきた。


「気持ち悪くないのか?

動物と話せるんだぞ?

他のやつらと違うんだぞ?」


「なんで?動物と話せるなんてすごいじゃん。

他の人には真似できない特技だと思うけど」

私は首を傾げると、水谷はほんの少しだけ嬉しそうに笑った。

「今まで、動物と話せるなんて言っても

馬鹿にしなかったやつなんていないから」

私は水谷の表情を見て、不覚にもドキッとしてしまった。

顔、赤くなってないだろうか。



「小さい頃、友達に動物と話せるって言ったら、

馬鹿にされてイジメられた。

それからは、誰にも言ってない」

いじめ……。

だから水谷は他人と関わろうとしなかったのかな?

「私は馬鹿になんかしないよ。

むしろ友達になってほしいと思う」

「あぁ……。お前も珍しいやつだな」

気がつくと、

水谷はいつもの無表情ではなくなっていた。

私は

他の人が知らない水谷を独り占めできたような気がして、

うれしくなった。

「動物、好きか?」

「好きだよ?」

私は水谷にドキドキしてるのがばれそうで、

もっとドキドキしていた。

「来いよ。リスとかいろいろいるから」

「私いていいの?」 水谷は頷ぎ、

私の腕を掴んで歩き出した。

私は自分の心拍数が上がるのを感じた。

私、水谷のこと好きなのかも……。  

私は水谷に導かれるままに歩いた。

その間もずっと水谷が気になって仕方がなかった。

正直、ドキドキし過ぎてその後の記憶は曖昧だった。

動物に囲まれて水谷と話をしたのは覚えてる

。気がついたら水谷に恋していた。

恋って、こんなに急なんだ。

もちろん、その数日後に告ってオッケーもらった。



私は今、水谷の彼女。  

水谷はあの時から、他の人の前でも少し笑うようになった。

でも水谷の特技を知っているのは私だけ。

ちょっとうれしいんだ、二人だけの秘密があるのって。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい
  • 作者の氏名を表示して下さい

初恋

ボカロとは関係ありませんが・・・

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閲覧数:158

投稿日:2014/08/06 04:46:31

文字数:2,367文字

カテゴリ:小説

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    モモ

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    こういうお話大好きです!歌詞を書く参考にしたいなっておもいました!

    2014/08/06 20:40:21

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