「さあさあ今宵お集まりの紳士淑女の皆様方、

世にも不思議な冒険奇譚をお聞かせいたしましょう・・・」


ほら吹き男爵　酒場の真ん中　今夜も自慢の旅土産

どうやら北の国で恋に落ちた　その名もねじ巻きレディの噺がひとつ


*****

彼女の名前はねじ巻きレディ　真夜中に咲いた薔薇のように美しく

ねじ巻きレディはその名の通り　背中に銀のねじがある

ひと巻きすれば踊りだす　ふた巻きすれば歌いだす！


私はその晩　彼女のねじをひと巻きしたのさ

１２３、瞬き忘れる華麗なステップ

「ラム酒で酔わせたような　本気の恋は経験なさって？」

勿論落ちたのさ（まっさかさまにね）

どろり甘い　灼けるほどの恋に！


彼女の名前はねじ巻きレディ　南中に昇る星のように儚げ

ねじ巻きレディは心を閉ざす　銀のねじをきつく締めて

ひと巻きすれば踊りだす　ふた巻きすれば歌いだす！


私はその晩　彼女のねじをふた巻きしたのさ

ドレミ、呼吸も忘れる哀歌のメロディ

「世界さえ欺けるような　本気の恋に溺れさせてよ？」

無論贈るのさ（しつこいくらいに）

くらり香る　溢れるほどの愛を！


Guten Tag，ねじ巻きレディ

世界中の花を貴女に

Guten Abend，ねじ巻きレディ

天文鳥の話は聞くかい

Bis Morgen，ねじ巻きレディ

その瞳に　私が映る夜は来ない・・・


私はその晩　彼女のねじに口づけをひとつ

Danke，時間も忘れる素敵なショウを

「トニックを混ぜたような　とても綺麗な恋でしたわ」

結論要らないさ（まったくだ）

ほろり苦い　飲み干すほどの涙。

*****


ほら吹き男爵　酒場の真ん中　今夜も自慢の旅土産

どうやら南の国で捕まえた　その名も天文鳥の噺がひとつ