ジャケット

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寸陰惜しむ人なし。
これよく知れるか、愚かなるか。

愚かにして怠る人の爲にいはば、
一錢輕しといへども、
これを累(かさ)ぬれば、
貧しき人を富める人となす。
刹那覺えずといへども、これを運びてやまざれば、
命を終ふる期(ご)、忽ちに到る。

されば、道人は、遠く月日を惜しむべからず。
ただ今の一念、空しく過ぐるを惜しむべし。

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もし人來りて、わが命、明日は必ず失はるべしと告げ知らせたらんに
今日の暮るゝ間、何事をか頼み、何事をか營まむ。
我等が生ける今日の日、何ぞその時節に異ならん。

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その餘りの暇、いくばくならぬうちに無益(むやく)の事をなし、
無益の事を言ひ、無益の事を思惟(しゆい)して、
時を移すのみならず、日を消(せう)し、月をわたりて、
一生をおくる、最も愚かなり。

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兼好法師
徒然草108段寸陰惜しむ人より抜粋
「訳」
短い時間を惜しいと思う人はなかなかいないものだ。
あなたはこの意味をよく知っているか、
それとも、全く知らない愚か者か。

知らないで時間を無駄にしている怠け者の為に、忠告しておきたい。
一銭はわずかな金だが、これが貯まると貧乏人を金持ちにする。
一瞬のような短時間は、その流れをはっきり意識するのは難しいが、
だからといってその時々を無駄にすれば人間の一生はたちまち最期を迎えてしまう。

従って、賢者は、一日とか一月という長い時間を惜しむのではなく
今生きて意識しているこの一瞬が無駄に過ぎてしまう事を惜しむ。

もし誰かやってきて、「貴方は明日必ず死ぬ」と教えてくれた場合、
今日が終わるまでの間、何を考えて、どんなことをするだろうか。
私たちが生きている今日というこの日も、
明日死ぬと言われたときの残された時間と全く変らないのだ。

そんな状況にありながら、意味のないことをし、
意味のない事を喋り、意味のない事を考えて、時間を消費してしまう。
そればかりか、そんなふうにして一日を費やし、
一月を過ごし、一年を送り、ついには一生を送ってしまう。
もっとも愚かな事だ。

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Sun in osim becaraz

兼好法師
徒然草108段「寸陰惜しむ人」より抜粋
制作コード「古文調の音楽制作の試み」。個人的な感覚で日本語がロックやポップに向かないと思っているので英語の歌詞しか書かないし、それに合わせたメロディしか作らない。無論、そういった音楽を聴いてこなかったので作れないと言った方が良いかも知れない。そんな中で昨年は平安時代がテーマになった年でもあり古文に興味が湧いていたところ、以外にも古文の言い回しが最近の音楽に合うことを発見し、作ろうと思ったのがきっかけ。古文の表現ならどれでもよかったのですが、源氏物語にすると取って付けたような話になるのでいろいろ探していると徒然草に歌詞になりそうなものを発見したので採用しました。1000年前の人の言ったことを1000年後の人が最先端のツールを使って表現するのはなかなか面白い。
ジャンルとしてはピップホップですがヒップホップバラードというあまり聞きなれないカテゴリーになるのではないか?と思っています。音楽的にはサビは形になっていると思いますが、A,Bメロとも不定形で対称性もあまりなく日本的なまとまりの無さにまとまりを感じるような仕上がりになっています。
短歌や俳句を連ねて歌詞にするのも面白いですが、一貫性があるものを抜粋するのも時間が掛かるし、自分で作るのも時間が掛かります。メロディの制作にも制限が掛かるのでやっていません。これは試しに作ってみましたが、古文の翻訳ツールがネットにあるのでそれを使ってオリジナルの歌詞を書いて自作の音楽に乗せてみようと思っています。今年はそういうものにチャレンジしようと思います。

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投稿日:2025/01/06 21:34:42

長さ:04:54

ファイルサイズ:4.5MB

カテゴリ:ボカロ楽曲

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