私のまわりは泣き虫ばかりだ
みんなそれぞれ
色々な理由で涙を流している
人は私のところに来ると
思い思いの悩みを話しはじめる
せきを切ったように
どろどろと流れ出す言葉
彼らはそれを私へ吐き出すと
とても満足した顔をして
当たり前のようにどこかへと歩いていく
あぁ、また今日も、
誰かが私のもとへとやってきた
想いを寄せた人に思いきって告白したが、
どうやら振られてしまったようだ
溢れる涙を手で覆い、
あまりにも泣きじゃくるので
私は彼女に
「大丈夫、きっとまた、いい人が現れるよ」
と言った
彼女はしばらくして泣き止むと、
立ち上がり少しだけほほ笑んで
また何も言わずに歩きはじめた
それから少しして、
また泣き虫がやってきた
彼は犬を飼っていたそうだが、
その犬が重い病にかかり、
亡くなってしまったそうだ
犬の写真を抱えて泣きじゃくる彼に
私は
「大丈夫、想い出は、消えてなくなったりしないわ」
と言った。
彼はしばらく泣き続けると、
犬の写真をそっと胸ポケットにしまい、
少しだけほほ笑んでまた歩きはじめた
たくさんの人がたくさんの思いから涙を流す
私のところへやってきた泣き虫たちは
私の心に一粒ずつ涙を落とすと
立ち上がり、皆どこかへと歩いていった
泣き虫たちがほとんどやって来なくなったころ
私の心は
泣き虫たちの涙でいっぱいになっていた
動けば溢れてしまいそうだったので
私はずっと、じっとしていた
「こんにちは。ねぇ、私、ここから動けないの」
私は近くにいた人に話しかけた
けれども彼らは
恋人に囁く愛の言葉に夢中で
こちらには気付かない
「ねぇ、私も、誰かに話を聞いてほしいの」
今度は、別の人に話しかけた
だが彼もまた
愛する動物たちとのスキンシップに忙しく
こちらには気付かない
「ねぇ、私、たくさんの人のお話を聞いたの。
皆の涙も、こんなに溜まったのよ、ほら」
私は心を掴んで取り出し
よく見えるよう手の平に乗せた
だけど
泣き虫だった人たちは
ほんの少しだけこちらを見ると
少しだけ嫌そうな顔をして
またどこかへと歩きはじめてしまう
「ねぇ、私、誰かにお話を聞いてほしいの」
「ねぇ、誰でもいいの」
「私ね、とっても泣きたいことがあったの」
「でも、ひとりで泣くとみんなの涙がこぼれちゃうから、
誰かに聞いていてほしいの」
「ねぇ、誰か、」
笑顔を取り戻した泣き虫たちは
彼女の呼びかけには目もくれず
泣き虫たちが誰もいなくなった頃
握りしめた彼女の心から
ぽとり、と一粒、
涙が溢れた
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