1.ストライク・ゾーンの曖昧さ
ところで、現在のルールでは、前図のストライク・ゾーンは次のように定義されている。
(ストライク・ゾーンの定義:公認野球規則2.74)
「打者が投球を打つための姿勢において肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平線を上限とし、膝頭の上部ラインを下限とする本塁上の空間」
この定義の中にボール、ストライクを巡る全ての抗議の種が潜んでいる。まず上限とする「肩の上部と、ユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平線」とはどこか。そんな印はどこにもないことを全ての野球ファンは先刻承知である。上限を低くするためにはズボンの上部をできるだけ下にし、股上を短くすればよいのではないか。
また、下限とする「膝頭の上部ライン」についても印はない。誰でも知っているように、膝頭は丸い。一体どこが膝頭の上部なのか。ルール自体がこのように曖昧であるから、最速・時速162キロのスピードで投球される球についてボール、ストライクの判定も当然曖昧になるのは当たり前のことである。人間の目は左右についているからホーム・ベースの左右のストライク・ゾーンについては、訓練である程度正確に判定できるかも知れないが、高低、とくに低目についてはキャッチャーが遮蔽となり、人間の目が正確に判断できる領域ではないのである。高低の判定がいい加減であることはバッターによって身長が異なることも一因である。ピッチャース・プレートとホーム・ベースまでの距離は18.44メートルである。この距離を時速150キロのボールが通過する時間は、次のようにして求められる。まず時速150キロを秒速に直すと、
150km/時÷60分÷60秒=41.7m/秒
となる。したがって、通過する時間は、
18.44m÷41.7m/秒=0.44秒
わずか0.44秒である。ましてや球審がストライク・ボールを判断するホーム・ベースの幅の広い部分はたったの21.6センチであるからこの部分をボールが通過する時間は、
0.216m÷41.7m/秒=0.005秒
となり、わずか0.005秒、すなわち1秒の200の1、瞬きをする時間よりも短いのである。これは明らかに人間の視力の限界を超えている。要するに球審のストライク・ボールの判定は勘によるものであり、いかにいい加減であるかということがご理解いただけただろう。このいい加減さを担保するために、次のようなルール(公認野球規則9.02(a))を必要とする。「投球がストライクかボールか、という球審の判断に基づく裁定は、最終のものであるから、プレーヤー、監督、コーチまたは補欠が、その裁定に対して、異議を唱えることは許されない」
まさに審判員は独裁者である。このルールは球審の裁定が神のように正しいという意味ではなく、こうしないと一球ごとに異議が唱えられ、ゲームの進行が妨げられることを避けるようという意味を持っている。従って、光センサー・システムを導入すれば、この独裁的なルールは不要となる。
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