「……疲れたな…。」

誰もいない部屋で呟いた。

今日の朝、あんなことがあったからか、ルカは帰りはずっと無言だった。
静かになったのは良かったが、チラチラと見てくるのは止めてほしかった。

「…今日はもう寝るか。」

いつもならまだ寝ない時間だが、まぁいいだろう。

「……おやすみ、姉さん。」

棚の上にある写真の表面を撫で、寝室へ向かった。




















―――――――――――――




「待って、姉さん。」

「何?」

「はいコレ。忘れ物。」

「あら、わざわざありがとう。」

そう言って、姉さんは俺の頭を撫でた。
くすぐったかったが、悪い気はしなかった。

「じゃあ、いってきます。」

「…いってらっしゃい。」





俺は姉さんと2人で暮らしていた。
母親は俺が3歳の時に事故で死んでしまったらしい。
俺はあまり覚えてないけど。
父親は行方不明。
いきなり消えた。
でも保険金とかあるから、生活はそこまで苦しくない。

だけど姉さんは万が一の為、とか言って働いてお金を稼いでいる。
昼間だけじゃなくて、たまに夜も出掛ける。
夜に出掛けるのは、仕事の為では無いと、俺は思っているが。

「寝るか…。」

姉さんが帰って来るのは遅くなると言っていたので、先に寝ることにした。














「ん…。」

朝、目が覚めると、姉さんは帰って来ていなかった。
いつもは朝にはちゃんと帰って来ていたのに…。

「姉さん、いないの?」

問いかけてみたが、返事はない。
不思議に思い、姉さんの部屋の扉を開けた。
姉さんの部屋の中はグチャグチャに荒らされていた。
…こんなに荒らされていたのに、俺は気付かなかったのか?
それはあまりにもおかしい。
そう思いながら、部屋の奥へと足を進める。

「な…っ、」

思わず声をあげてしまった。
ベットの上に大量の血痕があった。

「まさか…、」

姉さんの?と心配をしていると、急に苦しくなってきた。

「っ…、」

胸を押さえ、片膝をつく。
息が詰まる。
頭が割れるように痛い。

「……あ…っ、」

頭の中に誰かの声が流れてきた。

『チガホシイ…タクサンノ、チ…。』

ベットの上の血痕に目がいく。
…チガアルジャナイカ。
フラフラとベットに近寄る。

「血…。」

「メイト!」

体がビクッと跳ねた。
さっきの誰かの声は聞こえなくなっていた。

「ね、姉さん…?」

いないと思っていた姉さんが部屋の扉の前に立っていた。

「今、何しようとしたの?」

いつもと違う強い口調に、また体がビクッと跳ねた。

「俺…は、」

言葉が出ない。
だって、俺がしようとしていたことは…。

「血に興奮した?」

「…………………。」

何も言えない。

「やっぱり、か。」

溜め息をついて俺を見る。

「ねぇメイト。自分のこと、どこまで知ってる?」

「え、どこまでって…、」

どこまで、と言われても答えようがない気がする。
そんな考えが俺の表情に出ていたのか、姉さんが口を開いた。

「ごめんなさい、聞き方が悪かったわ。…まずは父親のこと覚えてる?」

「…覚えてない。」

「そう……。」

姉さんは顎に手をあて、考え込んでしまった。

「…今からする話は本当のことよ。……信じるかは、アナタ次第だけど。」

顎から手を離して、此方に向き直った。
俺は無言で頷いた。

「まずは父親のことね。私達の父親は人間じゃないわ。吸血鬼なの。行方不明って言ってるけど、本当は殺されたの。何処の誰かにね。あ、でも母親は人間よ。…ここまでは大丈夫?」

「…あ、あぁ。」

普段なら信じない、現実味のない話。
だけど、ついさっき血に反応した自分がいる。

「続き、いいかしら?」

「…どうぞ。」

ひとまず今は話しを聞いた方が良さそうだ。

「つまり私達は、人間と吸血鬼のハーフなの。アナタより私の方が吸血鬼として目覚めるのが早かった。だから夜、私は出掛けて血を吸っていたの。…そのベットの血痕は私のじゃないわ。予備の血を溢しちゃったやつかしら?それと、部屋がグチャグチャなのは、溢しちゃったせいで血がなかなか飲めなくて、イライラしちゃった時につい、ね。」

ニッコリ微笑みながら、そんなことを話している。

「…俺も、姉さんみたいになるのか?」

「えぇ、勿論。」

姉さんは、何故か嬉しそうに目を細めた。
背筋に冷たいものが走った。

「ふふ。そんなに怯えなくても大丈夫よ、メイト。血の吸い方とか自制心を保つ方法とか、ちゃんと教えてアゲルから。」

「…ありがとう。」

情けないぐらい声が震える。
姉さんが言ったことは本当だと思う。
こんな状況で嘘ついてもしょうがないと思うし。

「今日は学校休みなさい。疲れたでしょ?」

「ん…そうする。」

姉さんに聞きたいことはたくさんある。
だけど、今はこれ以上頭に入りそうにない。

「俺、部屋に戻るから。」

…今日は色々と考えなくてはならないな。
そう思うと、溜め息が出た。

「私は仕事行くから。」

そう言って姉さんは出掛けた。
…朝帰りなのに元気だな。




―――――――――――――





「う…。」

目を開けると、まだ辺りは暗かった。
久々に姉さんの夢を見た。
…最悪な気分だ。
立ち上がり、コップに水を注ぎ、飲み干した。

「チッ…。」

舌打ちの音が周りに響く。
…ルカに聞かれたくらいで、夢に出るくらい動揺していたなんてな…。
自分のことがイラつく。
窓側までよると、満月が見えた。
じっと満月を見つめた。
…女々しいな、俺は…まだ割り切れてない。
頭を振り、思考を中断する。
…寝よう……。
頭まで布団をかぶり、目を閉じた。






ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

真っ赤なキャンディ†12†

今回はメイトの過去編です。
連載再開とか言って、1ヶ月以上空けてしまった(^^;
その分結構長めです!
次も過去編続くと思います。

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閲覧数:240

投稿日:2011/08/08 01:46:22

文字数:2,409文字

カテゴリ:小説

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  • 禀菟

    禀菟

    ご意見・ご感想

    久しぶりだね!!
    何か意味ありげな過去…
    お姉ちゃんはメイコかな?
    ルカはどうするのw

    2011/08/08 12:09:39

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