嗚呼、大好きな君へと送る最後の手紙
「…え?」
それは桜の振る季節に、ふいに言われた。
耳を塞ぐひまなど無かった。
私、蜜村音葉は絶句した。
あんなに強かった彼が、死んだ?
…嘘に決まってるじゃない。
そりゃ、1ヶ月ほど連絡は無視されたよ。
家に行っても、誰も居なかったよ。
だけど、彼は死んでない…よ
「…実玲…?」
彼女は、泣いていた。
あまり泣かない彼女が泣いていた。
これは…本当なのだろう
…嗚呼…彼…死んじゃったんだ。本当に
不思議と、涙は零れなかった。
何故だろう…愛しの彼氏が死んだはずなのに、どうしてだろう?
―――‐-…
彼の、お通夜が終わった。
でもやっぱり涙は、零れない。
そんな事を思っていると、誰かが私の隣に立っていた。
ふっと横を見ると
「…ぁ・・・!!」
衝撃を隠せなかった。
隣の人は、ゆっくりと微笑んだ。
「お久しぶりね、音葉ちゃん」
彼のお母さんだった。
「はい…」
一応、哀しげな表情を見せた。
「…音葉ちゃん」
「はい?」
「これを、渡しておけってあの子に頼まれたの」
彼の母親の左手には、一通の手紙があった。
「…これは?」
「あの子からの…手紙ね」
中は読んでないけど、と無邪気そうにウインクした。
私は薄い微笑を浮かべて、彼の母親と別れた。
「ただいまー」
「おかえり」
母の笑みが飛んでくる。
「晩御飯、後で食べるね」
私が二階に上がりながら言った。
「え?あ、えぇ良いわよ」
という母の寂しげな声が聞こえた気がした。
「ふぅ…」
お通夜に持っていった鞄を投げる。
そして、ベッドに沈み込んだ。
「…」
『これを、渡しておけって…』
「あ!!」
私は彼の母親からの手紙をもらった事を思い出し、鞄の中をあさった。
「あった…」
それは、真っ白な彼らしい封筒にいれていた。
ぱら
開いてみる
「……」
私は一旦手紙を閉じてしまった。
「嘘…でしょう?」
一瞬、本当に時が止まった様に思えた。
もう一度開く。
…こう書いてあった。
『音葉へ
お前の事、大嫌い!!…はは、驚いた?
嘘だって(笑)…ちゃーんと好きだったよ。
突然、連絡無視してさごめんな?
怒ってるだろ?先に謝っとく!!
けれど、本当に伝えたいことは違うんだ。
俺、お前の連絡無視したの…ビョーキがあるからって
医者に言われたからなんだ。
って、これあのドラマみたいだよなッ!!
でも、現実で起こるなんて夢にも思わなかった。
これお前が読むとき…俺、生きてンのかな。
怖い。わかんねぇ、全然わかんねぇけど
もし、俺が死んでたら嫌だからさ
先に言っとくね。
大好きだよ。愛してる。伝えきれない。
…言葉で言わないと分かんないだろーから。
と、ごめん。
先に天国に行ったらごめんな。
お前は、付いてくんな!!生きろ!!絶対!!
…絶対だぞ?
ありがとうな。
俺、幸せだよ。
だから、お前も幸せになれ!!
なっ?
んじゃぁ、書くコト無くなった!!
じゃあな!! レント』
「…何言ってんの…」
涙が、零れた。
こんなに字が震えてて
こんなにいっぱい消し跡あって…
こんなに愛してくれて。
「自分…の方を心配しろっつーの…」
入院してて怖かったでしょう
いつ死ぬか分からない病に怯えながらくらしていたでしょう
私に、心配をかけさせないようにしたでしょう
そして
ひとりで、頑張って生きたでしょう
「…言ってくればッ…良いじゃん…ッ…」
かっこつけて俺様かよ
かっこ悪いよ…
何で、1人で生きたの…
私という人がいながら…
「…ッ…ばか…ばかばかばか!!!!!レントの馬鹿野郎!!!!!」
もう、戻れない。
桜が散っていく、初夏に私の泣き声は消された。
…けれどね、私が言った後、声が聞こえた気がしたんだ。
笑いながら
『うるせーよ!!馬鹿音葉!!』
って。
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