【Pierrot 一枚の写真】


フル「あのさぁ、今日サクのフォルダを片付けてたんだけど、懐かしいもの見つけたんだ」
ヤタ「何だ?」
フル「これなんだけど」
ヤタ「あぁ、これか・・・」
フル「懐かしいでしょ?」
ヤタ「懐かしいな…」

イヴ「どうしたの?」
レイ「何見てるんだ?」
フル「あ、イヴ、レイおはよー。これなんだけどさ」
レイ「写真か。 って、これもしかしてサクか!?」
フル「うん。俺とロキが二人で撮った最初で最後の写真だよ」
イヴ「ロキ?」
ヤタ「“愚音ロキ”。サクがバグる前の名前だ。」
フル「本当に懐かしいな…」





フル「ロキー。早く早く!」
ロキ「えっ、待ってよ。これうまく結べない」
フル「ネクタイの結び方も知らないのか?」
ロキ「だっ、だって、ぼくはいつも裏方だからこんな正装したことないよ」
フル「あー…。そうだったな」
ロキ「結べない…」
フル「泣くなよっ。俺が結ぶからじっとしてて」
ロキ「フル、くすぐったいよ」
フル「じっとしてる!」
ロキ「うっ、うん」
フル「OK! ばっちりだよ」
ロキ「ほんと?ありがとっ」
フル「どういたしまして! さて、写真館に出発!」


フル「ロキ、どうしたの?」
ロキ「みんな見てる…」
フル「ん?」

「あれ、サーカスのピエロだろ」
「失敗ばっかの駄目ピエロじゃん」
「ピエロのくせにおめかししてるよ」

ロキ「・・・」
フル「気にすんな。笑われるのは、俺の仕事だから」
ロキ「でも…」
フル「な、泣くなよっ。人目につかないように路地に入ろう」
ロキ「うん…」
フル「ほら、せっかく正装したんだから、泣くなよ」
ロキ「でも、フルの代わりに泣くのがぼくの仕事だから…」
フル「…俺は、心の奥ではそんなに泣いてる?」
ロキ「フルが悲しいのに笑ってるのが、悲しくて…」
フル「俺は、平気だよ。だから笑って」
ロキ「嘘ばっかりつく…」
フル「…ロキ、もう泣かないでよ」
ロキ「フルは泣かないの…?」
フル「俺は、大丈夫だから」
ロキ「嘘つき。ここなら人目につかないし、二人きりの時は泣いていいんだよ」
フル「だって、俺が泣いたら、他の人が悲しむんだ…」
ロキ「フルは人のことばっかり… ねぇ、それならぼくのために泣いてよ」
フル「え…?」
ロキ「フルが自分のために泣けないなら、ぼくのために泣いて?」
フル「いいの…?」
ロキ「うん、そんな引きつった笑顔じゃ誰も笑わせられないよ。
   だから、今いっぱい泣いて、明日は笑お?」
フル「ロキ…」
ロキ「…ありがとう、ぼくのために泣いてくれて」


フル「…いっぱい泣いたし、そろそろ写真館に行こっか?」
ロキ「涙で顔くしゃくしゃだよ」
フル「ロキだって」
ロキ「あっ、せっかく正装したのに…」
フル「拭うからじっとしてて」
ロキ「うんっ。ありがとう」


フル「ここ座って」
ロキ「えっ、ぼくが前なの?」
フル「今日はロキが主役でしょ」
ロキ「うっ、うん」
フル「笑顔が引きつってるよ」
ロキ「笑うのは慣れてないから…」
フル「ロキ。今度は、ロキが俺のために笑って」
ロキ「…わかった」
フル「良い笑顔だね。ありがとう…」





レイ「この写真、二人とも泣いた跡があるな」
イヴ「目元が赤いね」
ヤタ「イヴみたいだな」
レイ「でも、いい笑顔だ」
イヴ「二人とも幸せそうだね」
フル「幸せそう、じゃなくて、本当に幸せだったんだよ。あの頃は仲良しで、ロキがいつも助けてくれたんだ。短い間だったけど…」
ヤタ「すまない… システムが不完全だった…」
イヴ「でも、僕たちはもともと強い感情を受け入れられない器しかもっていないから」
レイ「悲しみだけを背負い続けてればいつかな…」
ヤタ「違うんだ、あれは完全に私のせいなんだっ」
フル「ロキは、悲しみを背負うために作られていても、ずっと幸せそうだった…」
イヴ「じゃあ、マスターのシステムの見落としが原因…」
ヤタ「ごめん、ロキ…本当に… 私が最後までシステムのチェックが出来てさえいれば!」
レイ「最後まで、できなかったのか?」
フル「団長が、俺の心の負担を案じて、仮のシステムの段階で引き取ったんだ」
イヴ「それは…」
ヤタ「せめて、私が早いうちに点検に訪れられてさえいれば…!」

サク「何騒いでんだよ?」
イヴ「サク…」
サク「それはいいんだっ。フル、お前また勝手に俺のフォルダ掃除しただろ! ゴミどこに捨てた!」
フル「え?」
サク「え?じゃねぇよ! まだ完全に削除はしてねぇよな!?」
フル「してないと思うけど…」
イヴ「えっ、ごめん。ゴミ漁り終わったから消しちゃった…」
サク「はぁ!? ふざけんなてめぇ!」
レイ「おい! ふざけんなはこっちのセリフだっ。 イヴに手ぇ出したらどうなるかわかってるよな?」
ヤタ「…私があの時…」
フル「ちょっと、待ってよ」
イヴ「何か、大事なものでもあったの…? 一応ゴミ箱のものは全部確認したけど…」
サク「お前っ… 見たのか!?」
レイ「何をだよ」
サク「だからっ… 大事なものだよっ」
レイ「それが何かって聞いてんだよ」
サク「…捨てたならもういいんだ」
イヴ「ごめん… 特に大事そうなものはなかったと思うけど…」
サク「・・・」
フル「…あのさ、大事なものって、もしかして、これ?」
サク「…っ!! お前何勝手に持ち出してんだよっ!!」
フル「これ、まだ大切にしてたんだ…!」
サク「返せよっ」
フル「これのために、そんなに怒って…」
サク「フル、お前、泣いて…」
フル「ロキ…」
サク「…なんだよ」
フル「ありがとう」
サク「気持ち悪いな…泣くなよ」
フル「サクが泣かないから、サクの代わりに泣くよ」
サク「お前な…」

ヤタ「うわぁぁぁぁん」
サク「なんだよっ ヤタいつの間にチビ状態に…」
ヤタ「ごめんな、ロキ…!」
サク「…誰に謝ってんだ。俺は、…サクだよ」
ヤタ「私がちゃんとしてれば、ずっと仲良しで…っ」
サク「泣くなよっ くっつくな、鼻水がつくだろっ」
ヤタ「ごめんな、ごめん…」
サク「…ったく、うるせぇな…泣くなって」
ヤタ「うわぁぁぁん」
サク「泣くなって…」
ヤタ「ずっと、フルとロキは仲良しでいれたはずなのに、私のせいで…!」
サク「…もうやめてくれよ、…思い出すだろ」
ヤタ「ロキーーー!!」
サク「…もうっ、やめてよ! …ぼくとフルはずっと仲良しだから!」
フル「サク…?」
サク「今は、怒らせることしかできないけど、フルが本当の顔を出来る様に、ずっと一緒にいるから!」
ヤタ「ロキ…?」
サク「今の僕は、サクだけど、気取り屋の獏だけど、役目はずっと変わってないから。
     だから、俺は、ずっとフルと一緒にいるよ。…なぁ、もう泣くな」
フル「サク!!」
サク「…ちょっ、抱きつくな、気持ち悪い」
ヤタ「俺もっ!」
サク「ヤタまでっ 苦しいって!!」

イヴ「よかった。ずっと仲良しなんだね」
レイ「ちょっと暑苦しいけどな」
イヴ「僕もヴェンと仲直りできると良いんだけど・・・」
ヴェン「やめて下さい、気持ち悪い」
レイ「聞いてたのか」
ヴェン「通りかかっただけだよ。 何ですか、あの状況は」
イヴ「仲直りだよ」
ヴェン「はぁ、仲良しなんですね」
イヴ「ちょっと暑苦しいけどね」
レイ「イヴとヴェンも気は合うんだけどな…」


-End-

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

【小説(セリフ)】Pierrot 一枚の写真【愚音フル・獏音サク他】

【出演】
愚音フル・獏音サク・馳音ヤタ・黒音イヴ・黒音レイ・黒音ヴェン

共有ファイルに、この小説のイメージにもなっている
「ピエロ」(絵師じゃないKEI様)のフルサクカバーも投稿しますので、宜しければ聴いて下さい

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フルは、人を笑わせるために作られた人形で、
人前では笑顔以外の表情を見せることができません。
サク(ロキ)は、そんなフルのために悲しむ人形として作られましたが、
バグで性格が変わってしまい、フルをからかう様になってしまいました。
フルは、サクの前でだけ笑顔以外の表情を見せることができます。

今回は、バグで性格が変わってしまうまでの短い期間の中から一場面。
ロキという名前は初めて公開しましたが、北欧神話のロキから。
兄弟なので、もともとの名字は一緒でした。

フルは、「サクはロキだった頃のことをほとんど覚えていない」と思っているのですが、サクは案外覚えていたようです。



何となくでヤタとイヴとレイを出演させたのですが、
結構関わりを持たせられたので良かったです
フルとサクはあまり腐っぽくならないので、イヴとレイより書きやすい。
いい兄弟です。
あと、ヤタさんは自由ですね。もしかしたら後半はわざとかもしれません。
一人称が私になってるのは、マスターの意思のせいです(普段は俺かヤタ)。


意見などお待ちしております!

閲覧数:140

投稿日:2013/08/06 00:13:01

文字数:3,046文字

カテゴリ:小説

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