#13「崩壊世界」
ミク「パラレルワールド!?」
シャンラン「調律員の応戦が間に合わず崩壊した未来の可能性の1つよ。未来に来ているとはいえ今後の私達の居た次元が必ずしもこうなるとは限らない。こんな空間に召喚するとか、アイツの歌唱エネルギー量どうかしてるわ…」
この校舎の掲示物を見る限り、ここは「四ッ波中学校」という中学の校舎のA棟らしい。シャンランが言うに、出くわしたローブの女性の時空間召喚術が原因だと言うが…
シャンラン「こんな無茶苦茶な召喚術式使えるやつなんて、私の知る限り1人しか居ない。私は奴をみつけてくる。貴方達は、どこか安全な場所で身を隠していて」
ミク「え?それって…」
レン「僕達は足でまといって事ですか…?」
いくら円卓第7席調律員のシャンランの指示でも、こんな空間の中で1人で行動するのが無謀過ぎる事くらいミク達には分かっていた。階段下から首を伸ばして外の様子を見るが、得体の知れないバケモノ達がウロウロしている。
カナタ「本気で言ってるんですか。いくらシャンランさんが調律員として強いからって、あのフードの女の元に行って無事でいられる訳…」
シャンラン「侮らないで。私だって円卓の第7席を任されてるのよ、こんな事で負ける訳にはいかないの」
先程まで目の当たりにした現象に顔を青ざめていたが、今や目元に力が戻っていく。
ミク「…絶対、無事に帰ってきて下さいね!?」
カナタ「…。」
こんな世界に、無事なんて言葉は存在するのだろうか。カナタが真っ先に思った事はそれだった。
リン「こっちだよ!!」
避難するにしろそこら辺をチンタラ探索してもキリがない。ここで役に立つのが、リンが召喚した探知専門のクリーチャーだ。
ミク「こんな事が出来るんだ、凄い!!」
レン「リンは医療調律員資格と一緒に、召喚術資格も獲得してるんだ。色々と便利なクリーチャーを召喚出来るんだよ」
カナタ「こんな所でもクリーチャーの召喚は可能なのか。せめてもの救いか」
レン「いや、環境は結構悪い方。それでも正確に召喚出来たのはリンの…」
レンが説明してる途中で、誰か女の子の悲鳴が聞こえた。割とすぐ近くからだ。
ミク「今の…何!?」
リン「この世界にも人が残されているの!?早く行かなきゃ!!」
ミク「もう何がどうなってるの…」
半分パニックを起こすミクの手を引くリンも、逃げたくて仕方ないのは同じだった。
???「来ないで!来ないでっ!!!」
教室に独り取り残された少女。必死に扉を抑えるが、今にも汚染されたバケモノに侵入されそうだ。
???「どこにいったの… 早く助けに来てよ、[ハルト君]!!」
今にも泣き崩れそうな気持ちを抑えてドアを必死に押し返す。
ミク「[オーバードライブL]!!」
少女が押す扉がいきなり軽くなった。外にはもうバケモノは居ない。
リン「安心して。見方だよ」
少女は恐る恐る扉を開けると、そこに頼もしい調律員達が居た。
メロピィ「君、お名前は?」
???「ヤヨイ。岩崎ヤヨイです…」
恐らくこの学校の制服なんだろうか、酷い破れ方に返り血を纏ったセーラー服が確認出来る。いや、返り血だけでなく本人もかなりの怪我をしていた。
ヤヨイ「お姉さん達は調律員なんですか?今のバケモノも倒したって事でしょうか…」
レン「まだ新人だけどね。ここのバケモノの群衆はほんとに手強いよ」
カナタ「その上に、この校舎内に閉じ込められてるっぽいな。音が狂ってるにしろどこにも風が吹き通す音がしない」
メロピィ「ここもいつバケモノ達に嗅ぎつけられるか分からないよね。避難先をよく考えないと…」
気がつくと、ヤヨイが細々と手を挙げていた。
ミク「どうしたの?」
ヤヨイ「えっと…実はどうしても合流したい友達が居るんです」
今はまだこの教室は安全地帯のようだが、あまり大きな声を出すとすぐに気づかれる。さっきバケモノを吹き飛ばした時の音である程度周りには勘づかれているかもしれない。
ヤヨイ「アツヤって言うんです。4日前の夕方に学校に残って飼育小屋の手入れをしてたって聞いて校門前で待ってたんですが、いきなり辺りが真っ暗になって学校から大きな物音がしたんです。アツヤ君が不安で学校に戻ってみたら、アツヤ君には1度再開出来たんですが急に閉じ込められてしまって…」
震えながら少しづつ起きた事を話してくれた。
レン「変だな。音が狂ってバケモノが湧くならまだ分かるけど、そうタイミングよく扉が閉まるなんてことあるのか?」
どこのドアも鍵がガッチリ閉まっていた。彼女曰く職員室に鍵は置いてなかったらしい。
リン「ここのバケモノ達は知性は無いはずだよ。あんなに肥大化した腕で扉に鍵かけれるほど器用じゃない」
レン「って事は、人為的なものか…学校の外から鍵をかけ2人を意図的に閉じ込めた誰かが居る」
それを聞いた時、真っ先に頭に思い浮かぶのは、あいつしか居ない。
ミク「私達をここに送り込んだ張本人!?」
全員同じ事を考えていた。正体こそ掴めないにしろ、空間を操るような力を得ていたとしたら合点がいく。
リン「さっきから気になっていたんだけど、ここの学校変な結界貼られている… 窓を割れば脱出くらいは出来るって思ってたけど、これも空間の操作がされていたら」
と、言葉を遮るカナタ。
カナタ「論点ズレてる。さっき言ってたアツヤ君とはどこで見失ったの?」
ヤヨイ「それが…」
ヤヨイ「それが、大ホール前なんです… 少し見たんですけど、あそこには1番やばいバケモノが居座っていて特に危険なんです!!」
いきなり彼女の体の震えが大きくなった。よほど怖い思いをしたのだろうか。
ミク「ヤヨイちゃん!大丈夫!?」
すかさずミクが介抱する。
レン「さっきチラっと校舎の案内を見たけど、そこまでは遠くないね。動きにくいだけで近くには居るかもしれない」
リン「でも、さっきのバケモノだけでもかなりの歌唱エネルギーを使っちゃった。 回復するまで待っていたらアツヤ君が不安だし…」
色々と策を練ってみるリンとレン。だけど見通しが悪く敵の位置も把握出来ない上に彼女の言う1番危険なやつの戦闘力が分からない。
ミク「私がやる。1番でっかいのは私がぶっ飛ばす!!」
ミクの目付きが変わった。悩んでいても仕方ない、もう時間がない。
レン「了解、俺は陽動とサポートをするよ」
リン「私も、取り巻きを引き付けておくよ!」
カナタ「それじゃメロピィ、ミク達が暴れてる間にアツヤ君を探すぞ」
メロピィ「うん!あそこの地形は大体分かってる!」
皆の目に迷いが無くなった。各自手持ちのマジカルアイテムの準備を進めている。
ヤヨイ「ほんとに大丈夫なんですか!?アレを怒らせたら…」
レン「大丈夫。ミクは負けないから」
絶対的信頼。いつ自分達が巡り会ったかも覚えていないのに、再会してから1ヶ月も経っていないのに、それでも信じる事が出来るエース、それがミクなんだ。
ミク「絶対にここから脱出してみせる!!」
みんなで結託した瞬間、南の方からすさまじい轟音が響いてきた。大ホールの方からだ。
ミク「今の声がボスだね… 受けて立つ!!!」
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