メッセージを投稿できる場所はどこも、これと似た内容の発言が多く書き込まれていた。
そして今も増え続けている。
音楽の情報を交換する掲示板でも、映画のレビューを投稿するような場所でも。
さらに異様なのは、それらの言葉を受け入れている人が多数、存在している点だった。
その現実では考えられない出来事に対して、多くの人が真面目に言葉を交わしているのだ。
まるで、その出来事を信じられるだけの決定的な何かがあったように。
インターネットの世界には、ある遊びがある。
ジョークというか悪ふざけというか、架空の事柄などをさも本当にあることのように参加者達が話を連ねていき、1つの話をでっちあげてしまうというものだ。
大体は誰かがネタとなる面白い空言を書き込み、それを見た他の人が相乗りする形で話を膨らませていく。
こういうのは怖い話などでたまに見かける。
ぱっと見るとこの『少女になった』という多くの書き込みはその遊びにも思える。
もし親父や未来が少女になっていなかったら、俺はきっとそう考えたに違いない。
1つだけ確かなのは、親父と未来に起こった変化が他でも発生しているということ。
それもたぶん、その数は少なくない。
そしてこの現象は、今もなお広がり続けているらしいということ。
数分前の投稿で、こういうものがあったからだ。
『さっき目の前にいた奴がいきなり少女になった』
窓の方を見るといつも通りの風景が見える。
この辺りは住宅が密集しているし2階からの眺めだから景色が良いとは言い難いが、周りに背の高い建物はないし、窓の向こう側には家屋を挟まずにそこそこ広めの駐車場があるため、見通しは悪くない。
座ったまま部屋の中ほどから窓の外を眺めると、少し離れたところに古くも新しくもない普通の民家が見え、それらの向こう側には晴れ渡った空が見える。
少し強めの日差しを部屋の中に降り注いでくるいつもの夏の空、清々しいはずのその青い空が今はどこかが違って見える。
見ているとなぜだか、心の奥の方が少しざわついてくるのだ。
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