街のはずれに、小さな本屋が忽然と現れた。普通の本屋とは違い、店の屋根に古びたプロペラが付いていて、どうやら空を飛ぶらしい。興味本位で扉を押すと、中には見たこともない本が山積みで、ページの隙間から微かに光が漏れている。店主は小柄な少年で、目を輝かせながら「どの本も読むと別の世界に行けるんだ」と説明してくれた。
手に取ったのは一冊の青い表紙の本。ページを開くと、まるで自分が物語の中を歩いているような感覚になった。街の景色が目の前に広がり、道端の花の匂いや風の音までリアルに感じられる。読んでいるうちに、本屋ごと空に浮かび上がり、雲の間をすり抜けるように飛んでいることに気づいた。
物語の登場人物と一緒に小さな冒険を重ねるたび、現実ではありえない景色や出来事に心が踊る。気づけば、地上の街並みは遠く小さくなり、目の前には未知の島や光る森が広がっていた。本屋のプロペラは静かに回り続け、僕たちを次のページの世界へ連れて行く。
読み終わるころ、本屋は静かに街の一角に降り立った。外に出ると、さっきまで冒険していた世界の余韻だけが心に残っている。手元の本はいつの間にか閉じていて、見た目は普通の一冊。でもページをめくるたび、あの空の旅が再び始まる予感がする。日常の中で、小さな魔法に出会える瞬間は、いつだって意外な場所に隠れているのだと改めて思った。
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