君を苦しめたかったわけじゃない。
君を悲しませたかったわけじゃない。
口から零れた涙は、いつの間にか君を焼いていた。
まるで硫酸のように。
カラカラふわふわな君の唇に伸びた爪を立てた。
染めていく紅は何を意味するのだろうか。
踏み出した足に錆びた紐が絡み付いて、私を縛る。
私は先にいかないよ。
驚いた?不安だった?怖かった? そりゃ結構。
染まっていく涎は速度オーバー、最高速。
綺麗に重ねてみれば誘惑されちゃう君の指に、
迷わずかじりついた。
繰り返しの効かない呪文に酔わされ、朝焼けふらふら。
唯一の愛が私を掴んで、再拘束。
君を苦しめたかったわけじゃない。
君を悲しませたかったわけじゃない。
ただ、愛して欲しかっただけなのに。
君を楽しませるはずの口からは君を傷付ける言葉を、
君を優しく抱きしめるはずの腕は君を押さえ付け、
君をゆっくり愛でるはずの指はただ君を苦しませ、
君と揃えて歩くはずの足は君を踏み潰した。
なぞるだけじゃ満足できなかった。
泳がずに浮いてるだけなんて無理だ。
ただ君を掻き回したくて、壊したくて。
私を守ろうとしたのが君だったように、
私も君を守ろうとしただけだったんだ。
それがいつしか君を傷付けられたくない一心で、
君を閉じ込めた。
壊れたわけじゃなくて、間違っただけ。
それだけだったのに。
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