[壊したままでも、直しても]

いつものように、この家では外と違うリズムで生活が進んでいる。
午前二時。
外は、とっくに静まり返っていることだろう。
この時間だけ、この家はにぎやかだった。
マスターがパソコンを起動するから。
ぼくはパソコンを起動してすぐに、この家にやってくる。
いっつも、自分のマスターのパソコンの前で、
この家のパソコンがつくのを待っているから。
シア・・・ウサのフォルダに向かうけど、
ウサは遊音を追い、パソコンの外に出てしまう。
ぼくはそれを、嫌だったり不安だったりで追いかけていく。
...気に入らない。なぜ、遊音なのか。
彼に助けられたということは聞いた。でも...
「今まで、そこはぼくの居場所だったのに...」
そっと、小さく呟く。
誰に言うわけでもないけど、溢れ出てしまう心の悲鳴。
「...どうかした?」
そんな小さな嘆きに、静かな声で尋ねられる。
こんなことに気付くことが出来るのは、彼しか居ない。
「ハイさん...ですか。何でもないですよ。」
彼に話したところで、どうにもならない事くらいは分かっていた。
その、壊れたデータの瞳は、ぼくを見ているようでいて、
目の前のモノなんて見えていないんだろう。
シアを待ち続けていた時の、ぼくの瞳に似ている気がする。
不安定で、今にも崩れてしまいそうで、それでも信じている...
「どれだけ待っても、戻って来ないモノ...。
 前までは、当たり前に其処にあったのに...ね。」
何も見えていないその瞳。
本当は全てを知っているのではないだろうか。
彼は、言い終わるとドアの方を一瞬向き、
二人がゲームをしている姿を瞳に収める。
「そう...ですね。」

失ってしまった彼と、戻ってきたのに足りないぼく。
誰もが、満たされることを知らないでいる。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • 作者の氏名を表示して下さい

【短編小説】壊れたままでも、直しても【ライ視点】

澪さんが描いて下さった、ハイ君を助けに、
ノートに書いていた短編を書き直してみました;
短くてすいません~;;

ハイ君が、他の子とどんな話し方をするか書いてみたかったんです。
相手があまり話さなくても、自分が経験したことは大体察っしながら話しそうな気がします。でも、大体は聞く側です。

因みに、ヒト君の話を聞いていることが多そうです。
ヒト君は、一人で居るハイ君が気になるんではないでしょうか...?
ハイ君は、話しかけられれば、普通に話を(聞くのを)楽しんでるみたいです。

自分から話しかけるのは、自分と似た空気を感じたときのみです。
そのため、アイ君には普通に話しかけたりしてます。

閲覧数:86

投稿日:2009/08/12 00:30:57

文字数:763文字

カテゴリ:小説

クリップボードにコピーしました