「レーン!レンここだよっ!」
自分たち以外に人がいないにしてもその大声はどうだろうと思いながら、少年は少女の姿を確認した。少女は少年に向かい叫び続ける。喚き声、しかしどこか凛としている幼い声が鼓膜を震わせる。
「レンは、レンは私が思いっきり抱き付いてきたら、受け止めてくれるっ?」
「場合による。だから、この場合は、」
「無理じゃないよ!」
遮った言葉は遮られた言葉を否定した。
「レンは絶対に私を受け止めてくれる。絶対、絶対だよ。無理なんかじゃない。それはレンが一番わかってることでしょう?」
一人喋り続ける少女の顔は少年からはよく見えなかったが、恐らく恍惚とした表情をしているだろうと把握することができた。それほどまでに、少女の口振りは高揚を最大限に表したものであったのだ。
溜め息を一つ。少年は困ったような、それでいてどこか嬉しそうな笑みを浮かべ、両腕を目一杯に広げた。
それを見た少女は今までのやり取りで一番の笑顔を見せ(それもまた少年からは見えていなかったが)、高い高い塔を蹴り浮遊感に包まれた。
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