――2020年・9月11日・土曜日・午前3時・水面基地正面ゲート前セキュリティーチェック――
 「ふーう・・・・・・。おい。交替の時間だぜ。」
 「あ、はい。お願いします。自分は一休みしますよ・・・。」
 「どれ、今日の新聞はと・・・・・・クリプトンの新型ボーカロイド、アカイトにカイコか・・・相変わらず人そっくりだな。」
 「警備部長はどう思います。そのボーカロイドって言うのは。」
 「もう大して人と変わらんな。よくここまで作ったもんだよクリプトンってのは。」
 「そういえば、うちの基地にも人間そっくりのアンドロイド、いますよね。」
 「雑音ミク、他にこの前来た四人、いや四機か。ん、ありゃ装甲輸送トラックじゃねぇか。しかも大型の。なんたってこんな時間に・・・・・・・・・おい! そこで一旦停止しろ!!」
 「兵器開発局のトラックですよ・・・これ・・・・・・。」
 「なんだこんな時間に。」
 「兵器開発局の者です。先日ここに配備された戦闘用アンドロイドの専用装備をお届けに上がりました。この基地の司令と防衛省に許可を頂いております。これがそうです。」
 「ふむ。では保安上、積荷をチェックさせてもらう。」
 「どうぞ。」
 「お前はそこにいろ。」
 「自分にも見せてくださいよ。」
 「しょうがねぇな。おい。ロックを開けろ。」
 「はい。」
 「・・・・・・見えるか?」
 「ライトで照らしましょう。」
 「む・・・・・・こりゃあすげぇ代物だな。」
 「これが翼で・・・あれが武装ですか。」
 「なるほどな。よし。閉めろ。」
 「もういいですか。」
 「ああ。行ってよし。」
 「・・・・・・。」

 
 ◆◇◆◇◆◇


 今朝のミーティングで、俺達ソード隊がスクランブル隊員から外されたこと、今日の未明にタイトとキク達の専用装備が基地に届けられたこと、そして、2日後にこの基地の警戒態勢を強化するために日本防衛海軍の新造空母、「雪峰」の艦隊が到着することが分かった。この基地全ての飛行隊がそれと共に警戒任務に就くようになるらしい。これからこちらも本格的な防空態勢が整うところだ。これで興国が二度とあのような行動に出てほしくないものだが・・・・・・。
 なお、タイト、キク、ワラ、ヤミの四人は部隊に配属されず「シック小隊」という名で新たな部隊となった。四人もミーティングに顔を出すようになりそのことはしっかり伝えられた。

  
 ◆◇◆◇◆◇


 俺はフライトスーツを脱ぐと自分のロッカーのハンガーに掛け、強化人間の証である黒地に赤いラインの通った制服を取り出した。
 スクランブル隊員から外されたことでやっとこの窮屈なフライトスーツから開放され、ゆったりした制服に戻ることができる。それにあの待機室からも開放された。あの部屋はご丁寧にヘッドまで備え付けられている。言うまでもない。俺達はあの硬いベッドと窮屈なフライトスーツで一夜を過ごした。何度か体験しもう慣れたことだが、やはり気分のいいものではない。
 「なぁ。今日どーする?俺達非番だし今日土曜だろ。」
 麻田がズボンを履きながら気野に話しかけた。
 「うーん、僕はちょっと久しぶりに図書館に行こうと思っててね。」
 この基地は内部の者が外出できることは滅多にない。そのため基地の中の生活が苦にならないように様々な施設が設けられている。そうでなくても、空に上がるとき意外は太陽を見られない生活なのだ。この基地の者のストレスも考えた故だろう。
 「そういえば、ミクちゃんは?」
 「何でも、今日来た専用装備の接続テストを見に行くと言っていたよ。」
 「ふーん・・・・・・。」

 
 ◆◇◆◇◆◇

 「よし。接続完了。ワラさん。動かしてみて。」
 「うわーすごっ。ホントにあたしの翼だよー。」
 ワラさんは専用の赤と黒のアーマーGスーツを纏い、背中の専用ウィングを自在に動かしていた。昨日の認証ディスクのインストールはうまくいったようだ。
手元のノートパソコンはケーブルでウィングと接続され、それの状態が手に取るように分かる。どうやら、これならすぐに空を飛べる。
 「どうです博士。燃料入れてみますか。」
 ウィング専属の整備員が問いかけた。
 「はい。やってみてください。」
 ウィングの稼動は正常だった。あとはエンジンの具合を確かめるだけだ。
 ウィングの背部にある給油口にホースが接続され、PCのモニターに内部に燃料が給っていくのが数値で表された。あと一分ほどで満タンになるだろう。
 僕は格納庫を見回した。僕の近くには同じく少し派手なカラーリングのアーマーGスーツを着たタイト、キク、ヤミさんがウィングの調整をしてもらっていた。みんなもう自由自在に動かしている。その様子を隣でミクがじっと見つめていた。
 「よし。満タンになった。ワラちゃん。エンジンかかるか?」
 「うん。やってみる!」
 ワラさんがウィングを大きく展開するとエンジンのタービンが回転する音が聞こえてきた。次第に音は耳を劈くほどの大きさになってきた。PCにはタービンの回転数のほかにもエンジンの状態が表示されていた。これも正常。もうワラさんは飛べる状態だ。
 そのとき、
 「うわっ!」
 僕がPCから顔を上げるとワラさんは格納庫の30メートルくらいの天井まで一気に舞い上がった。そのせいでウィングとPCを繋いでいたケーブルがもぎ取れた。
 「ワラさーん! もういいですから降りてきてください!」
 僕が呼びかけてもエンジン音に掻き消されて聞こえるはずがない。ワラさんもこちらに向かって何か行っているようだけど無論聞こえない。
 「ワラーッ!戻ってこーい!!」
 タイトの呼び掛ける声が聞こえた。だが聞こえないらしくワラさんは航空機用エレベーターの方を向くとヒュッと飛んでいってしまった。地上へ出る気だ。それはまずい。 だけどエレベーターのハッチが開いていたためワラさんは吸い込まれるようにエレベーターを上がっていってしまった!
 「行ってしまわれた・・・・・・。」
 「どうします博士・・・・・・。」
 「僕に言われても・・・・・・。」
 「あのバカ・・・・・・。」
 「ワラ、飛んでっちゃった・・・・・・。」
 「また勝手なことを・・・・・・。」
 「ひろき。わたしが連れ戻してこようか。」
 横からミクが言った。確かに、今はそれしかない。
 「うん。頼むよ。」
 
 
 ◆◇◆◇◆◇

 
 「なんだ?! レーダーに反応あり!!」
 「どこだ! 座標は!!」
 「それが、この基地の内部からです!」
 「なんだって? 管制塔、航空機の離陸か?!」
 「いえ、航空機ではありません! これは・・・・・・アンドロイドです!」
 「なに、ミクか?!」
 「いえ違います! 殺音ワラ、シック3です!」
 『指令部、聞こえるか。こちらソード5。今からワラを連れ戻してくる。』
 「・・・・・・どうします。」
 「ミク・・・お前に任せる。」
 
 
 ◆◇◆◇◆◇

 
 ワラはどのへんを飛んでいるのだろうか。あたり一面の海、晴れ渡った空を見回して探してみた。無線でも呼んでみる。
 「ワラ! どこだ、戻って来い!」
 するとワラの声が返ってきた。
 『いーじゃんちょっと飛ぶぐらい。お堅いんだからー。それに少佐から今日中に飛べるように言われてんでしょ。』
 「だけど、何の許可もなしに・・・・・・。」
 『あーもーうっさいなー! ちょっと飛んだらすぐに帰るって。』
 そのときわたしの上に小さく点が見えた。あれだろうか。わたしはその影に向かって飛んだ。するとワラの姿が見えてきた。わたしはワラの隣に並んだ。
 『あーあ。見つかっちゃった。』
 「ワラ・・・・・・。」
 「なによ。」
 「こめん、無理やり呼び戻しに来て・・・・・・でも、空を飛ぶのは気持ちいいだろう。」
 『うん・・・・・・すごくいい。風がちょっと寒いけどね。』
 「わたしもそう思う。だから、あと少しだけ、飛んでいよう。」
 『なーんだ。ミクもその気じゃん。』
 『指令部からソード5、シック3へ。速やかに帰投せよ。』
 『えー。たくっ。せっかくミクと飛ぶところだったのに。』
 「しょうがないよ。ワラ。一緒に帰ろう。」
 『ちぇっ。』
 するとまた指令部から無線が入ってきた。
 『ソード5、シック3、聞こえるか!』
 なんだか、緊張した声だった。
 「どうした指令部。」
 『緊急事態だ。そちらの空域Aー11に向けて国籍不明機が接近中だ!』
 敵だ。敵がまた来たんだ。それなら・・・・・・。
 『直ちにスクランブル機を発進させる! お前達はすぐに帰投しろ!!」
 「・・・・・・だめだ。」
 『何?!』
 「ソード5、敵機を撃墜する。」
 『何を言ってるんだ! 命令に従え!! 第一お前には武装が・・・・・・。」
 わたしは無線のスイッチを切った。そして、部屋から持ってきた武器を鞘から引き抜いた。
 『へぇー。あんたヤル気なの。へっへっへっそうこなくっちゃ!!』
 ワラも腰についている機械をつかんで取り出した。ワラも戦えるんだ。
 「敵の位置、分かるか?」
 『あいよ。』
 「じゃあ、いくぞ。」
 わたしとワラは翼を小さくたたむとエンジンの出力を最大まで上げた。
 「いーやっほ――――――――!!!!!」

ライセンス

  • 非営利目的に限ります

Sky of Black Angel 第十六話「天使の翼」

ワラ、交戦!!

実は僕、このごろスランプぎみナンスよ・・・・・・。
みんな、オラにこの小説を書き続ける元気を分けてくれ!
ちなみに質問や突っ込みがありましたら容赦せずどうぞ。
修正したはいいもののどうもスカスカだなぁ・・・・・・。

閲覧数:177

投稿日:2010/03/08 22:58:56

文字数:3,867文字

カテゴリ:小説

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