地図は焼かれた
磁針は奪われた
たよりは朧な記憶と
君が指すポラリス
醒めやらぬ西を嫌い
薄明の東へ
東風(こち)吹けどその香は
ただ異国の砂埃
君は遥か空の果ての
郷国に心とどめて
帰る場所のないものさえも
共に連れて旅路をすすむ
つめたく冴えた群青の中で
愚かさにも似た思慕を抱いて
死に至る太陽を疎み
夜の帳を迎える
出ずるべき山はなけれど
天頂に月は輝く
君は遥か海の果ての
彼のひとに心預けて
帰る場所を捨てたものさえも
拐かすように惹きつける
灼けつくような赤銅の中で
その罪深ささえ忘れたまま
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