1本の木の前に、1人の老人と小さな子供が立っていた。
枝だけの痩せた木は、とくに綺麗というわけでもなく、しかし老人はその木を
愛しむように目を細めて見上げている。そんな様子を、子供は不思議そうに
眺めていた。
「おじいちゃん、どうしてそんなにこの木を見ているの?」
子供の問いかけに、老人は視線を木から逸らし、子供へと向ける。
ひとつ、にっこりと笑いかけると、子供の手を引きながら木へ近寄った。
「今日は、素敵なお話をしてあげよう」
「どんなお話?」
老人の言葉に、子供は目をキラキラと輝かせた。木の根元に老人が座り込むと、
子供も一緒になってその隣に座る。早くそのお話が聞きたいようで、待ちきれ
ないと言わんばかりに子供は体を左右に揺らしていた。
ひとつ、息を吐いて。
まるで懐かしむように空を見上げながら、老人は口を開いた。
「昔々、キラキラと銀色に輝く花を咲かせた木が、海の近くに立っていました
その木の名前は・・・───」
銀色の桜 -after 50 years-
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