「例えば今、行きたい場所に行けるとしたらどんなところに行ってみたい?」
暗い空間で誰かの声が問う。
「僕は宇宙に行ってみたい!」
誰かが答える声がする。男の子の声だ。とても幸せそうに答えている。
「そうか。とっても良いね。わくわくできる場所だ。次は…そうだな、じゃあ君は?どこに行ってみたいんだい?」
また声が問う。
「私はお花畑に行きたいわ。いろんな花が咲いているの!」
違う誰かが答えた。今度は女の子だ。
「それはいいね。きっときれいな光景なんだろうね。えっと…最後に君だ。君はどこに行きたい?」
その声が俺の方向に向いてきた。なんかそんな気がした。
「俺は…。別に何処にも行きたくないよ…。」
どうせ何処へも行けないんだ。どうでもいい。
「…君は正直じゃないね。僕はそんなことが聞きたいわけじゃないんだ。さぁ、どこに行きたいんだい?」
そんなことを言われても困る。そう思う。だがそれと同時に勝手に口が動いた。だが、勝手にというのは正しい表現ではないのだろう。望んだ『場所』はない、けど望む『こと』はあるのだから。
「俺は…どこかに行きたい。今の場所じゃないところに。わくわくする場所じゃなくていい。きれいな場所じゃなくていいんだ。ただ、遠い場所に行きたいんだ。」
「正直に言えました。具体的ではないけど。とっても良い。君の願いが伝わった。」
声の主が微笑んだ気がする。優しく、子を見るときの母のように。
「それじゃあ、選ぶとしよう。僕が連れて行ってあげるのは。」
視界が明るくなった。あぁ、当たってたみたいだ。本当に微笑んでくれてる。
「君だ。」
コメント0
関連する動画0
ご意見・ご感想