いつにも増して教室がざわめく。
気のせいだろうか、ピンク色の空気が見える様で少し甘ったるい。
気まぐれ小説・ご(2/14?だから何?)
「おーはよッ!!」
「わっ!……何?」
いつもハイテンションなのに今日はまた一段と凄いな。
あたしの机にトンと手を置く友達に目をやった。
「ねぇ、持ってきた?」
「何を。脳味噌なら一応持ってきてますが」
「まったまたぁ~!すっとぼけちゃって!!」
全部言わせる気~?とか言ってるけどね、アンタのセリフにはいつも主語が無いのよ主語が。
「今日は何日?」
「14日。」
「そうじゃなくって!」
いや、間違ってないよあたしは。だからそう人差し指でおでこ突っつくのやめてくんない。
「違うでしょ?今日は~、バ」
「ああバレンタイン?」
「言わせてよ!ってか、知ってんじゃーん。」
「知ってるよ」
50年前に伊勢丹でフェアーをした事がきっかけで全国に広がった行事はもう皆誰もが知ってる。でもさ、初めてのバレンタインデーフェアの三日間の売り上げが3~400円ぽっちだったってのは知られて無い。
「で?持ってきた?」
「チョコ?何で?」
「何でって、バレンタインデーじゃん!」
「何で?」
「アンタねぇ…」
何で高価で美味しそうなチョコをわざわざあげなきゃいけないんだよ。あげる位なら自分が食べたいわァァァ!!と心で叫んで顔には出さない。
「…アレにあげないの?」
「…『アレ』?」
友達がくいっと親指で示す先には男子グループと雑談するアイツがいた。
「………何で?」
「~っ、あのさ、アンタは『ナンデ星人』?」
「………」
あのね。
だからこのあたしがあげられる訳無いじゃん何て言って渡すのよ「ホラ、食え」って位が限界だし何コレ色気のいの字も無くないコレ。
寒いわ。
「…あんたは彼氏にあげるの?」
「当たり前じゃん!」
「ふーん」
「『ふーん』て…あたし達はバレンタインがきっかけで付き合うようになったんだよ?」
「…ふーん」
「だから君もさ、渡しちゃえよ!」
うーわー、この人楽しんでるよね絶対。あからさまだもの表情が。その緩んだ表情が。もうつねってやりたい。
あたしの机の横に掛けてある紙袋にちょっと視線をやった。
※少し失敗しちゃったんだよな、コレ。
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