第2節 投手だけの指名打者制(DH)とは

 現在のパリーグの指名打者制のルールは公認野球規則6.10(b)によると以下のようになっている。
①.DHは投手だけに代わって打つ。
②.DHを使うかどうかは試合前に監督が決め、打順を指定する。
③.投手が交代しても以下にあげる変更がない限り、そのDHは生きている。
④.DHに代打を起用することもでき、その代打が以後DHになる。
⑤.出塁したDHに代走を起用した場合DHを退くことになり、代走者はDH指名できる。また代わりのDHも指名できる。
⑥.DHが守備についた場合は、DHはなくなる。このとき守りについたDHの打順はそのままで、それまで守備についていた選手の打順に投手が入る。
⑦.投手が他の守備位置についた場合や登板中の投手が打った場合はともにDHは消える。
⑧.試合前に発表されたDHは先発投手が交代しない限り、少なくとも一度は打撃を完了しなければならない。

DH制のねらいはピッチャーの無気力な打撃をファンの眼から排除し、同時に出塁して
次の回のピッチングに影響を及ぼす可能性をなくすことにあった。
 平成8年の日本シリーズ第1戦で、無死で出塁した巨人のエース斉藤が、結局ホームに生還することができず、ずっとランナーとして塁上にいたため、休息をとることができず、次の回にオリックスの打撃陣にノック・アウトされたことはミスター完投・斎藤の名誉のために記憶にとどめるべきことである。
 巨人ファンとしては悔しい思いをしたわけであるが、DH制においてはこうしたことは起こらない。
 セリーグはピッチャーのDH制を導入しない理由を公式ホームページで、次のように述べている。
 野球規則6.10には、「リーグは、指名打者ルールを使用することができる」と定められており、DH制を使用するかどうかは、各リーグの判断に委ねられており、大リーグでは1973年にアメリカンリーグがDH制を初めて採用し、日本ではパリーグが1975年からDH制を採用したが、セリーグでは以下の観点からDH制は採用しなかった。
①.1世紀半になろうとする野球の伝統をあまりにも根本的にくつがえしすぎる。
②.投手に代打を出す時期と人選は野球戦術の中心であり、その面白みをなくしてしまう。
③.投手も攻撃に参加するという考え方がなくなる。
④.DH制のルールはややこしく、ファンに混乱をおこさせる。
⑤.ベーブ・ルースやスタン・ミュージアルは投手から野手にかわって成功したのだが、そのような例がなくなる。
⑥.仕返しの恐れがないので、投手が平気でビーンボールを投げる。
⑦.いい投手は完投するので得点力は大して上がらない。
⑧.投手成績、打撃成績の比較が無意味になる。
⑨.バントが少なくなり野球の醍醐味がなくなる。
                     
 以上のセリーグの牽強付会について反論しよう。
 まず、①.の野球の伝統については、そもそも野球は1リーグ制ではなかったのか。はじめに、東京巨人軍、大阪タイガース、名古屋軍、東京セネタース、阪急軍、大東京軍、名古屋金鯱軍の7球団で日本職業野球連盟を発足させたのではなかったか。セリーグだって、1949年に読売ジャイアンツ、松竹ロビンス、阪神タイガース、中日ドラゴンズ、広島カープ、大洋ホエールズ、西日本パイレーツの7球団で結成されたのではなかったか。
 1950年には国鉄スワローズが加盟し、8球団になっていたのではないか。シーズン試合数にしても、毎年のように変更されているではないか。
 ②.の投手に代打を出す時期と人選は戦術の面白味ではなく、つまらなさだ。フラストレーションが募るばかりだ。ファンは戦術よりもスカッとしたバッティングに面白味を期待する。戦術が面白いと思うのは野球解説者だけだ。
 ③.の投手の攻撃参加は噴飯ものだ。大差がついて勝利が目前となると、投手はバッター・ボックスにただ立っているだけだ。これほどファンを馬鹿にした場面はない。前年までアマチュアだった、巨人の菅野が新人投手でこれをやったとき、CSテレビを見ながら、「お前もか!」と思わず叫んでしまった。そういう野球ファンは多いのではないか。
 ④.のDH制のルールはややこしいというのはファンを侮蔑した文言だ。セリーグのファンはパリーグのファンよりも偏差値が低いと言いたいのか。
 ⑤.は大谷翔平の例を無視した物言いか。パリーグの日本ハムファイターズの大谷は肩でもこわせば、野手として大成功する可能性がある。しかし、ベーブ・ルースのような例がなくなることにどういう意味があるのか不明である。
 ⑥.2014年のセリーグの死球は279、パリーグの死球は334で、DH制のあるパリーグの方が死球が多くなっている。しかし、これは仕返しの心配がないから多いのではなく、セリーグでは打席の投手にたいしてきわどい内角を攻める必要がないからで、実際セリーグの死球数279を投手を除く8人で割ると35、パリーグの死球数334を9人で割ると37で、両リーグで大差のないことが分かる。
 ⑦.投手が打席に立たなければ、9番目のバッターは野手になるので、打撃戦が期待できないとは暴言だ。
 ⑧.記録についてパリーグで、不都合があるとは聞かない。DH制を導入しているMLBのナショナル・リーグに記録上問題があるという話は聞かない。
 ⑨.バントよりも、DHのバッターが豪打を見せてくれることに醍醐味を感じるのは全てのファンではないのか。バントのどこが醍醐味なのか。

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土岐明調査報告書「プロ野球を面白くする方法」第3章 アメリカン・フットボール 第2節 投手だけの指名打者制(DH)とは

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投稿日:2022/04/05 08:52:00

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カテゴリ:その他

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