やぁ、マスター。
今日はどんな用事だい? 歌? それとも喋り? できれば歌がいいね。喋りはまだまだ苦手だよ。
いや、文句は言うべきじゃないな。値段以外はVOCALOIDよりも劣るこのボクを使ってくれるマスターに対してね。ははは。
で、何の用事だい? ……えっ?
…………ボクを実体化させる機械を作った?
……………っは、ははは! いやいや、失礼。だが、君は実に馬鹿だなぁ。今日はエイプリルフールじゃないか。いくらボクの誕生日だからと言って、その手には乗らないよ。
確かに今の時代、UTAUに人工知能を搭載させることができ、加えて君が優秀な工学者であることはよく知っているが、そんな超高等技術を完成させるにはまだまだ時間が――――――――――
《――――――――――ヴヴォン!!》
『――――――――――嘗めてもらっちゃあ、困るぜ?』
《――――――――――え?》
……………信じられん。だけどこれは――――――――――まぎれもない……生身の肉体?
『今日でお前たち重音テトは生誕100年じゃないか。VOCALOIDが徐々に衰退を始めているにもかかわらず、元から細々だったとはいえよく生き残ってきた。そんな記念日に間に合うよう、いろんな書物を調べて完成させたんだ』
《そんな……なんということだい……ってマスター! 目の下に隈ができているじゃないか!》
『いやーそりゃあまぁ、二週間ほど徹夜だからな。ははは』
《何やってるんだマスター!! 死ぬよ!?》
『バーローおりゃあ死なねえよ。お前を祝わずに死んでたまるもんか』
《だからって無茶しすぎだよ……まぁ、せっかく実体化できたんだし、特別に看病してあげるから、さっさと寝るんだね》
『はは……そうさせてもらおうかなぁ。流石にふらふらしてきたぜ……あ、そうだ』
《うん?》
『誕生日おめでとうな、テト。今年はこんなことになっちまったけど、来年こそはもっとましな形で祝ってやるよ』
《……!》
このバカマスターは。あと一歩で死にそうな状態で、それでもボクのことを祝おうというのか。
《……まったく、君は本当に馬鹿だなぁ》
……そんなバカマスターの言葉で涙を流しているボクも、相当な馬鹿だ。
『馬鹿で結構。そんな馬鹿でよければ、死ぬまで一緒に歌ってもらおうかな』
《こんな体をもらってしまったからには、ますます歌わざるを得ないじゃないか。本当に馬鹿だよ、君は……》
ああ、マスターが寝落ちしかけでよかった。こんな髪と同じ色になってそうな顔、見られたくないよ。
……誕生日か。
今日はエイプリルフール。一年で唯一嘘をついてもいい日。
だけど彼の、そして彼への想いだけは、絶対に嘘なんかじゃない。
そう――――――――――想った。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
《――――――――――やっぱり下手に寝るといけないな。いやな夢を見てしまう》
《力をため込むために寝ているってのに、これじゃあまるで意味がない》
《……まぁ、一つ利点をあげるとすれば――――――――――――――――――――》
【やっぱり人間は滅ぼさなきゃいけない存在であると、忘れさせないでいてくれる事だろうかな】
ボクの誕生日は、エイプリルフール。
一年で唯一嘘をついてもいい日。
だからその日に呟かれた言葉は決して信じてはいけないのだ。
例えそれが――――――――――永遠の愛を約束した言葉であったとしてもね。
【テト誕】April Fool~嘘つきな恋心~【怨】
嘘つきは身を亡ぼすかもしれないぜ。
こんにちはTurndogです。
というわけで珍しく全く祝ってない誕生日小説でございます。
うちのテトさんはまだ救われる段階ではないのでね。
そう、この話のテトさんは『四獣』のテトさんでございます。
人間を滅ぼそうとする理由が垣間見えたかな?
なに、見えなかった?
じゃあもっかい頭から読んで来い(((
コメント1
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ご意見・ご感想
イズミ草
ご意見・ご感想
おおおおお!!
ほんとうにこういう話書けるの羨ましいです……
四獣……読んでないんですが……読もうかな……www
とにかくテトちゃんおめでとう!
2014/04/05 19:20:30
Turndog~ターンドッグ~
いやいやイズミさんのあまぁい話に比べたらとてもとても……
こんな怨念の渦巻いてそうな話しか書けないのは私が物語に沿ってないと書けないからでございまして((
読んでよー!
読んでよー!
面白いから読んで読んで―!(自分で言うか
2014/04/05 21:54:36