―はじまりは遠い子供の頃の記憶
僕は道端で泣いている。
大きな声で助けを求めるように。
「うるさいガキだな。」
目の前には咥え煙草の男。
男は僕を見下ろし、踏みつけた。
「―――――」
泣き声がひどくなる。
男は苛ついたように、僕を何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、何度も―――
「大人が何をやっている?」
凛と響く声。
緑の髪の男なのか女なのかわからない人が立っていた。
多分、声からすると女の人だと思う。
「******」
男の方が何かを言って飛びかかった。
さっきまで蹴られていたから分かるけど、当たったら痛いと思う。
緑の髪の女は、僕が瞬きをしている間に男を投げ飛ばした。
「もう大丈夫だ。」
僕と彼女は、この場所で出合った。
―覚えているわけがないはずなのに、昔の記憶を見た。
汚くて、淀んだ世界。
僕はこの世界で生きている。
彼女に助けられて今まで生きてきた。
世間では、この場所を『ゴミのたまり場』と呼んだりしているけど、僕にはこの場所で満足している。
「もうこんな時間だ…」
仕事の時間が近づいていることに気がついた。
僕は生きる為にも、働かなきゃいけない。
仕事は重労働が多い。
遅刻は厳禁だ。
急がないと。
「いつも早いね。」
「そうですか?」
僕の雇い主は、僕を育ててくれた人。
綺麗な緑の髪をした彼女、名前は『グミ』。
「じゃあ、今日もよろしく。」
「はい。」
僕の仕事はただ、よくわからない機械の部品みたいなのを作ること。
例え、僕の作ったものが人殺しの道具になろうとも、僕は知らない。
仕事がやっと終わった。
今日は天気が良いから、少し寄り道をしていこう。
僕は『町』の近くに行き、
そこで
彼女と
出会ってしまった。
オレンジに染まった空。
太陽の光が目の前にいる女の子を照らす。
黄色の髪が光っている。
その子はとても綺麗だと思った。
でも、僕が惹かれたのは彼女の『歌声』だった。
僕の住んでいる世界にはない、綺麗で澄んでいる音。
歪んでいて、思わず耳をふさいでしまうような音じゃない。
「誰?」
唐突に歌が止み、髪の色と同じ色の目が僕を見つめた。
見たことがないほど、彼女の瞳は澄んでいた。
「僕は――」
彼女の名前は『リン』というらしい。
彼女と僕は住む世界が違う。
だから、彼女の住んでいる世界にはもっと綺麗な音があるのだろうか?
―それから、彼女と良く会うようになった。
彼女と会えば会うほど、僕はこの世界から出たい、という思いが強くなっていった。
「どうして、君はそっちにいるの?」
彼女は、僕に聞いた。
彼女は、僕が『歌』が好きなのに『歌』のない世界にいる僕に疑問を持ったらしい。
―どうして?
僕は考えて……
多分、僕は『グミ』から離れられないのだ。
グミは僕を助けてくれたし、それに………僕の住む世界は彼女が支配しているから。
彼女は僕を気に入っているし、僕はこの世界に入ったら抜け出せないことを知っている。
それなのに、この世界から出ようなんて、あまりにも無謀過ぎるだろう。
―頭ではわかっている。
それでも、僕はこの世界から出たい。
「グミ、僕はこの世界から出るよ。」
彼女は僕を睨む。
―怖い?
そうかもしれない。
―逃げたい?
うん。今すぐに。
それでも、僕は彼女と向き合わなければいけない。
彼女は僕に銃を突きつける。
僕は何も言わない。
……やがて彼女は銃を降ろした。
「……行け。」
彼女は僕を認めた。
僕は微笑む。
「…ありがとうございました。」
僕は走り出す。
どうか、彼女にもいつか素敵な音が届くことを。
道端で泣いている子供を見つけた。
「君の聞く音は、ここにはないよ。」
僕はその子供を抱き、この世界を出た。
コメント1
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ご意見・ご感想
禀菟
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さっすが魔熊!!
難しい曲を難なく解釈しちゃうなんて!!
グミちゃん優しいっす(*^^*)
もう嫁に来い←
2011/06/28 17:58:11