言われたままその動画を見続ける。
今はネットに繋がらないからこの動画は保存したものだろう、とてもスムーズに動いている。
…そしてそれは本当に何の前触れもなく起こった。
何が起こったか理解ができなくてしばらく無言のままそれを眺め続ける。
女性ニュースキャスターが突然よろけた。
膝をついたのか、司会台に手を残したままその体が一度ガクンと大きく崩れ落ちる。
彼女はすぐに立ち上がって笑顔を作り話し出したがすぐに怪訝な表情を浮かべのどに手をあてる仕草をした。
大人の白人女性だったはずのその人はいつの間にか少女になっていた、髪がオレンジ色のミディアムヘアで瞳の色が鮮やかなエメラルドグリーンの少女に。
静まり返ったそのスタジオの中で周りのスタッフのものと思われる男の声が響いた。
映像はその後ですぐにCMに切り替わった。
「これ、よろけた時に入れ替わったわけじゃないよ、もう1度見てみる?」
横から携帯電話を覗き込んでいた晶さんの指が画面の上をなぞる。
その指の向こう側にはまた30代くらいの白人女性が映し出されている。
「本当に人が少女に変わってるから」
まぶたを強く閉じると目を大きく開いてそれを見続けた。
司会台の向こう側に立ち笑顔で話し続ける白人女性を。
その変化は一瞬だった。
その部分を何度も再生したり止めたりした。
体が崩れ落ちる前、よろける直前には少女になっていた。
氷が溶けて水になるとかそんな緩やかなものじゃなかった、本当に何の前兆もなく変わった。
服装はそのままで、白人女性だけが次の瞬間に小柄な少女になっていた。
変化に取り残されたスーツがやけに大きくみえる。
画像が別のものに切り替わったとかそういうのは全く感じない。
画面が一瞬乱れたりとか消えたりとかなかったし、スタジオ内のセットも背景にある大型画面に映る中継先の映像も何も変わっていない。
カメラのアングルもそのままだ。
ただその中でその白人女性だけがいきなり少女に変わった。
「これありえないですよ」
「でも実際に起こったんだよ」
「いや、ありえないですって」
「悟くんのお父さんや未来さんも少女になったんだよね?」
抑揚が乏しいその晶さんの声が心に深く入り込んでくる。
【小説】俺と70億の鏡音リンちゃんと激しく降りそそぐ流星群(22)
ある日、突然、世界中の99.9999%の人間が少女(鏡音リンちゃん)になってしまった。
姿も声もDNAも全て同じ、違うのはそれぞれが持つ記憶だけ。
混乱に陥る人間社会の中で、姿が変わらなかった数少ない人間の1人・佐藤悟は…というお話。
なお、携帯電話で見ることを前提としているので、独特の文体で書いています。
『文の終わりに改行』
『段落ごとに一行空ける』
そのため、段落の一字下げなどは省いています。
見難くなっていたら、すいません。
意見があれば見直します。
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