「ねえ、ミク姉!今度、新ボーカロイドが来るんだって!」
「へえー、どんな子だろうね?」
「僕、ポスター持ってるよ!」
「あらレン、いたの?」
「……」
マスター宅で、ミクとリンレンは、新ボーカロイド、蒼姫ラピスを待っていた。
「こんな部屋で大丈夫かなあ?」
ミクが心配そうにつぶやく。
「心配ないって!」
ほら。
……。
そこら中に散らばった、書きかけの歌詞、食べかけのネギ、そして、ロードローラー(の絵)。
「……リン、どこが大丈夫なんだ?」
「うるせー、ショタは黙ってろー!」
「まあ、レン君の持ってきたポスターでも見よう!」
ミクが冷静に言って、ポスターを取り出す。
そこに描かれた、紫髪の少女。
大きなダイヤモンドだと思われる宝石をカチューシャにつけていて、後ろで長く髪を二方に伸ばしている。
瞳は、長いまつげでふちどられていた。
「かわいい」
思わずつぶやくレン。頬は赤く染まっていた。
それを見て、
「きーっ、何よ何よ!こんなの~!」
リンは黙っていられない。
「リン!?」
「リンのほうが、かわいいもん!だって、こんなカチューシャ、壊したら大変なくせに、かわいくない!それに比べて、リンのリボンのほうが、簡単でかわいいもん!それに、顔も、リンのほうがかわいいわよっ!この子、おとなしくて何もできない、気弱ちゃんよ!リンは甘えん坊な子猫ちゃんよ!――だから、レンは、リンだけ見てて!」
甘えん坊な子猫がどこにいるんだ?
レンは言葉を無理やり飲み込む。こんなこといったら、ロードローラーで引かれかねない。
「なにぃ?嫉妬?かーわいい!」
ミクが茶化す。
「そんなんじゃないんだから!」
リンが頬がリンゴのようになった、そのとき。
「お邪魔します!」
キターーーーーーー!
リンが叫んだのが合図だった。
一斉に、玄関に飛び出す。
「ラピスーーーーー!」
ラピスが、そこにいた。
【前編終了】
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