月影 滲(にじ)む闇 蒼く染めて
一人の 旅人 不意に迷い込む 過去の幻影(ゆめ)

燃ゆる 炎 視せる 黄金の宮殿
揺らぐ 水面(みなも) 映すは 優雅に 踊る少女

見つめる瞳が 重なり合った
時空(とき)を超えて 響く鼓動
時間(とき)を止めて 続く一夜(ひとよ)
物語(おはなし)は 始まったばかり……


いつしか 旅人は 願い出した
『彼女と 笑顔を交わし 触れること 出来たなら……』

けれど それは 決して届かぬ 夢想(ゆめ)
彼女が 生きるは 遠き夜(よ)に朽ち果てた 【荒廃した世の理想郷(さばくのはな)】

気付けば その手に 黄金の鈴
翳(かざ)し 鳴らす 夜(よる)の底で
やがて 音色(おと)は 幻影(ゆめ)を繋ぎ
踊り娘(こ)は 振り向き 微笑(わら)う


少女は 俯(うつむ)き 旅人(かれ)に 心意を問う
『千の夜(よ)が 目醒めるは この一夜(ひとよ)きり。
朝には泡沫(うたかた)へと還(かえ)り 二度と甦らない。
共に往くか 永遠(とわ)の別離(わかれ)
選びなさい 貴方(あなた)の 路(みち)を……』


砂漠に伝わる 【華】の伝承
心 渇きし 旅人を
誘い 酔わせ 逃(のが)さない
―――そう、まさに 蜜のように

また砂漠には 宵闇 広がり
響く 鈴の音(ね)
それは【幸】か【不幸】か
旅人は今や
踊り娘(こ)と共に 幻影(ゆめ)の中

交じり合う 微笑(え)みと嘲笑(え)み
『悠遠の宴を さぁ、共に―――……』