※警告という名の諸注意、やっちゃったよセルフパロ
・帯人×女性マスター(篠武)
・カイトは出てきません
・妄想による世界観、しかも本家よりダーク。
・オリキャラ満載(オリキャラは名前・設定ともにシャングリラと同じ・若干性格は変わっている場合もあり)
・帯人はアンドロイド・機械的な扱い、表現を含む
・女性マスターの一人称が『オレ』
※ここ大事※
多分いないとは思いますが…万が一、本家シャングリラを少しでも気に入ってくださっている方がおりましたら、今すぐ全力で引き返してください!本家シャングリラとは一切関係ありません。悪いのは全面的に私ですorz
恐らくツッコミ処満載ですが、エンターテーメントとして軽く流して楽しんで頂けると幸いです
上記が許せる方は、自己責任で本編へどうぞ
☆☆☆☆☆☆☆
29.
SIED・KANA
「本当にお久しぶりですね、五十嵐さん。何年ぶりでしょうか、」
「そうね、十年…ちょっとくらいかしら、」
「ああ、…確か、有栖お嬢様の葬儀の日、以来でしたかねぇ?」
「………、」
この私に喧嘩を吹っかけてきた企業の所有する、都内屈指の高層ビルの最上階で、そこの大元締めのボスと顔つき合わせての会食。あんまり気分のいいものじゃないけど、話はきっちり付けなくちゃね。
いくつか分かれた派閥の中でも、クソ爺に近い一族の関係者であるこの男は、…当時有栖を殺した張本人ではないかと噂もあった。
結局、何の証拠も見つけ出すことができなくて、事故と処理され終わったのだけれど。
「そういえば、あなたの所有する施設で、何だか物騒な事故があったんですってね?」
ワインを傾けながら水を向けると、肩を竦めた男はやれやれとでもいうように首を振る。
「全て調査済みなんでしょう?とんだ醜態を晒したものです、折角最高峰の『設計データ』をお譲り頂いたというのに、」
「あぁら、私は『譲った』憶えなんかないわよ?」
ネズミを忍ばせて人のもの盗んだ挙句、ぶち壊しにしといてよくもいけしゃあしゃあと…。
でも、狡猾・腹黒さに定評のあるこの男が、何の勝算もなしにここまで大それたことをしでかすなんて…思えない。
私に盾突いて取り込んだ、クソ爺の系列会社は大小含めて星の数ほど。リスクは充分承知していたはず。
「それで…アレは今、あなたが預かってくださっているんですよね?」
「違うわ、返して貰ったのよ。…アレはうちで引き取るから、どうかもう関わらないでいただきたいの、」
例え失敗作だって、元を正せばうちのものなんだし。これ以上勝手な真似はさせないわ。
「そうですか…。ところで五十嵐さん、あなた娘さんがいたんですね、最近まで全く知らなかったなぁ、」
「娘………、」
ああ。
なるほどね。
それがあなたの『切り札』ってとこかしら。
でも、それで私を脅しているつもりなの?
何を、何処まで知っているのか…これからじっくりと、聞かせてもらうわ。
30.
SIED・SINOBU
オレは生い立ちの関係上、あまり人と深く関わり合いを持たないように生活してきた。周囲との人間関係は、いつも上辺だけ。
しかも、加奈さんと暮らすようになってからは、オレの存在そのものを消す必要があったから、他人との交流は皆無…。
現在、携帯に登録されているのは三人。義母である加奈さんと、その実子…オレの義兄にあたる瑞樹と、正隆さん。
人との交わりの極端に薄い生活を送るオレに、社交性が備わっているか。いや、全くない。
(好きだの嫌いだの、考える機会どころか相手さえなかった。あれ、そもそもオレって、男と女のどっちを好きになるべき?…まぁ、どっちでもいいか。でも考えてみれば、今まで生きてきて、そういった感情を持ったことすらないような…どうやったら、人を好きになれるの?)
うん、いい具合にカオスだ。
だから、思いもかけず好意を寄せてくれた帯人に、少しの戸惑いを感じるとともに、大きな好奇心が沸いた。
(あの日から、ほぼ毎日ずっと一緒にいたとはいえ、一体オレの何処が、何が気に入ったのかな…、)
あの日の事件、その後の追加報告、帯人自身の言動。全てを総合して、彼は自分によく似ていると思った。
周囲によって歪められ、完成できなかった欠陥品。
初めてだった。
この世の中に、自分と同じようなものが存在するなんて、思ってもみなかった。
だから、放っておけなかった。
ぞんざいな扱いを受ける彼に、一人じゃないと伝えたかった。
(いや、違う。一人じゃないと思いたかったのは、オレのほうだな、)
『篠武は優しいね、』
そうじゃない。優しさなんて、欠片もない。
欺瞞?自己満足?ただの傷の舐め合いを、親切ごかして押し付けただけじゃないのか?
こんな自分勝手な偽善を知っても、帯人はオレを好きだと言ってくれるだろうか。
(だったら、)
オレも、他人を好きになれる?
帯人が、オレを愛したように、オレも帯人を愛せる?
出来そこないの歪な心臓は、不規則な律動しかできないけれど。
多分、だからこそ。
共鳴させるのは、響き合わせられるのは。
彼しか、いないのかも知れない。
31.
SIED・TAITO
篠武が好き。大好き。
これは僕の一方的な気持ちだから、彼女を困らせてしまうんじゃないかとか、引かれるんじゃないかとか。
気味悪がられたらどうしようとか、避けられたらどうしようとか。
たくさんの不安があったけど。
「好きって、どんな気持ち?どんな感じ?オレの何が好きなの?」
なんだか意外にも、変な方向から食いついてきた。
やっぱりアンドロイドのぼくが恋をするのは、おかしいのかな…。
「あー…、その発想はなかった。ごめん、そんなつもりじゃなくてさ。ただ…オレ、そういうの、…よくわかんなくて、」
「…わかんないの?」
篠武は誰かを好きになったことがないのかな、…あ、でもあったらやだな。篠武に、ぼく以外に好きな人がいるとか、考えたくない。
「うん、オレちょっといろいろ特殊だから、」
「……あの『まー君』って人は?好きじゃないの?」
ぼくが知っている中では、一番彼女に近い男。あんなに仲良さそうにしてるんだから、疑いたくもなる。…また、胸の奥がどろどろしてくる感覚がしてきて気持ち悪いな。
「まー君は…多分好きっていうより、気に入ってるってほうがしっくりくるかな、」
「………、」
ふぅん、そう。でも全然喜べない。『篠武のお気に入り』とか、何だか逆に贅沢じゃない?
「だから、人を好きになるってどういうことか知りたくて。帯人の感じたまま、思ったままを包み隠さず教えて欲しいんだ、」
少し真剣な眼差しが、ぼくをはぐらかそうとしているわけでも、からかっているわけでもないと言っている。
(包み隠さず?全部…言ってもいいのかな、)
この、どろどろした気持ち悪いものも、湧き上がる身勝手な欲求も?
これ全部、丸ごと含めて『好き』って気持ちなんだけど。
(さすがに嫌われちゃう…かなぁ?)
でも、ぼくの想いを素直に伝えれば、きっと彼女の求めている答えが見つかるに違いない。
それに、それだけぼくが本気だってわかってもらえる。
(これをきっかけに、ぼくを好きになってくれるかも…、)
なんて、下心?
ぼくは言われた通り、思いつく限りいろんな言葉に乗せて、篠武にたくさんの『大好き』を贈った。
続く
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