「やっとあったよ~」
自販機を探して大通りを歩いていた凪は建物の影にあった自販機に駆け寄った。
「地味なところにあるなー」
取り出し口からジュースを取り出しながら大通りを見ると係員がパレードの準備が行われていた。
「やばっ、急がなきゃっ」
急いできた道を引き返そうとすると足に何かが当たった。
「きゃっ」
「…っ」
転んだ表紙にジュースが転がる。
「大丈夫?」
「……問題は無い」
お尻をさすりながら相手を見て凪は驚いた。
全身を黒のコートで覆っている子供が転ぶことなく自分を見下ろしていたのだ。
頭部にはフードをかぶっており透き通った水色の長い髪がフードの間から覗いていた。

例えるなら死神のような少女だった。

「仮想パレードの子?」
立ち上がりながら聞くと彼女は答えることなくただ拾ったジュースを手渡した。
この遊園地ではたまに仮想パレードが行われるのだ。
「あ、ありがとう」
お礼を言っても彼女は黙ったままだった。

「えと、パレードにいかないの?」
自分の横を歩く少女に話しかける。(ぶつかってからなぜか少女は自分についてくるのだ)
「…興味ない」
対する少女はこちらを見ることなく淡々と答える。
「お母さんはどこに居るか分かる?」
「…知らない」
「迷子センターに連れてってあげよっか?」
「…必要ない」
(やりずらい……)
会話に疲れて明後日の方向を向いていると急に少女が立ち止まった。

「どうしたの?」
凪が尋ねても少女は喋らなかったがその視線の先にはポップコーンの屋台があった。
「…食べる?」
凪が聞くと少女は黙って首を縦に振った。

遠くでパレードの音楽が聞こえる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「マスター遅いな~」
マスターがジュースを買いに行ってから20分。
平衡感覚が乱されるような不快感は収まったが今度は余りすぎる時間との格闘に苦戦していたニガイトは我慢しきれず呟いた。
悠さんがどこから買ってきたか分からないホットドックを食べながら「そうだなー」と曖昧に答える。
「ちょっと探してきます」
「やめとけって。すれ違いになんぞ~」
「暢気ですね」
「焦るもんでもないだろ?」
そんな言い合いをしていると後ろから言いようの無い寒気がして振り返った。
「ん?知り合いか?」
悠さんがお気楽な声で尋ねる。
相手はそんなものでは無い。
「お久しぶり。それとも初めましてかしら。この現実で会うのは初めてだけど覚えていらっしゃるかしら?」
相手の鮮やかな紅い髪が揺れる。
「…忘れるはず、ないじゃないか」
かろうじて声を絞り出す。
冷や汗が止まらない。
「あら。それは嬉しいわ」
妖艶に哂う。
「こちらの方は?」
相手の視線が悠に移る。
顔が笑っていても目が笑っていない。
まるで、狩るものを見ているときの猛獣のような目つきで。
「…知る必要は無いだろ」
「ひでぇやつだな、ニガイト。別に俺は構わないぜ?」
後ろから何も分かっていない声が聞こえる。
「悠さんは黙ってください」
「あら、そんな言い方ひどいと思わない?私にも、彼にも」
彼女の笑顔が向けられる。
「それより名前、行ってなかったわね。キクって言うの。よろしくね」
「興味ないね」
猫科のきつい視線が向けられる。
「それより何をしに来た?」
彼女の笑みが凄惨さを増す。
戦慄する。
「そうね、あの時の続きかしら。仲間になる気は無いの?」
「ない」
「そう」
声は残念そうでも顔は哂っている。心底嬉しそうに。
走る。悠さんから遠ざかるために。
「悠さんはそこに居てくださいっ!」
「お、おい!?」
ベンチで唖然とする悠さんをおいて走る。
「せいぜい楽しませてもらうわよ」
「おいっ」
動き出すキクの肩をつかんだ悠は首筋に感じる冷たい感覚に言葉を失う。
「…邪魔しないで」
首から凶器が去る。
そのまま走り出すキクを悠は止める事ができなかった。

「…なにこれ……」
2人が行ってしばらくした後やっと悠は言葉をつむぐことができた。

ライセンス

  • 非営利目的に限ります
  • この作品を改変しないで下さい

日向さん家のボーカロイド[機械人形の苦悩] 3話

少し内容が軽くなってきたかなと思っています、あかちゅきです。
今までの内用読み返したけどすっごい動いてないですね。
なんか水分たっぷりしっとりじめじめな文章ですね!(分かる人はいないな)
ていうか今プロット(らしきもの)見直したけどふっわふわなハイテンションアゲアゲな内容ひとつも無いですね。ビックリだっ!

番外編(まだ内容考えてないけど)作るときにはハイテンションなヤツ仕上げてみます。

では

閲覧数:128

投稿日:2009/11/08 22:14:05

文字数:1,675文字

カテゴリ:小説

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